「IoT」という用語には分かりにくい部分もあり、話題の中で文脈に応じて、特定の要素(接続性など)にだけ焦点が当たることもある。筆者が所属するForresterでは、IoTの課題は単なるデバイスや接続性以上のところにまで広がっていると考えている。
技術的なレベルの課題には、これら2つの要素に加え、アナリティクス、高度な管理技術と監視技術、そして当然ながら、秘密を要するデータや資産を保護するための広範なセキュリティが含まれる。しかし、本当に重要なのはビジネスに対する影響であり、アナリティクスによって得られる知見や、IoTがもたらすビジネス上の成果だ。IoTから得られるビジネス上の成果は大きく3つに分けることができ、それぞれにいくつかの利用パターンが考えられる。
- 顧客とつながるため、IoT製品やIoT環境を生み出す設計を行うパターン。(例:ネットワークに接続された製品による新たなビジネスモデルの実現や、顧客体験の改善)
- プロセスの強化や、新たな効率改善手法の開発、顧客体験の強化など、IoTで業務の改善を行うパターン。(例:車両運行管理や、予測的メンテナンスなど)
- サードパーティーから入手したIoTデータを消費するシナリオ。(例:製品を補完する天候情報や交通情報など)
IoTはビジネスのあり方を変えようとしており、これには個人の役割や責任、そして協力しながら働く方法までが含まれている。これらのシナリオで期待される成果を上げるためには、企業が新たな形で協力することが必要となる。
同様にForresterは、どうすれば企業がIoTの潜在的な可能性を生かせるかについても深く議論している。以下では、2018年にIoTの分野で何が起きるかを把握して準備できるように、IoTに関するForresterの予想をまとめた。
- IoTのプラットフォーム製品は、「設計」と「業務」のシナリオに特化し始める。「AWS IoT」「General Electric(GE) Predix」「Microsoft Azure IoT Suite」などさまざまなプラットフォームが存在するが、顧客が想定するシナリオに適しているのはその一部かもしれない。2018年には、各プラットフォームは特定のニーズ(ネットワークに接続された新製品の開発や、ネットワークを利用したプロセスの導入など)に特化していくと予想される。
- 欧州委員会の新しいガイドラインにより、IoTデータの商用利用が可能になる。米国では、IoTデータを商用利用している企業の比率が欧州よりも大きい。欧州委員会は、欧州が後れを取っていることを認識しており、先進的な技術の利用を促し、データ経済を促進するガイドラインを作成するだろう。企業活動は欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)の制約を受けているが、2018年に定められると予想されるデータエコノミーに関する欧州委員会の指令は、データや知見の交換を推進するものになる。
- IoTのセキュリティ問題は、今後も脅威であり続ける。セキュリティ上の脆弱性は、IoTソリューションを導入する企業にとって大きな懸念要素だ。実際、セキュリティの問題は、IoTソリューションの導入を検討している企業の最大の懸案事項になっている。その一方で、多くの企業はIoTに合わせたセキュリティ対策を取っておらず、ビジネスのプレッシャーによって、セキュリティに対する懸念が後回しになっている状況だ。2018年には「Mirai」ボットネットのような、IoTが関係する攻撃によって引き起こされる大惨事が増加し、規模や影響もさらに大きくなるだろう。
--Christopher Voce(Forrester Researchのバイスプレジデント兼リサーチディレクター)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。