日本カードネットワークは、人工知能(AI)を使ったネットワーク監視を12月1日から試行開始している。クレジットカード決済サービスネットワーク「CARDNET」の安定稼働と決済サービスの品質向上を目指す。CARDNETのシステム統合を担当するTISの協力のもと、日立製作所の「システム稼働リスク可視化ソリューション」を採用した。
日本カードネットワークはJCBグループの一員で、同社が運営するCARDNETはクレジットカード会社と加盟店を結ぶクレジットカード決済サービスネットワークの一つ。同社が公表している2016年度の数値によると、CARDNETに接続するクレジットカードの決済端末は全国で約68万台に上り、クレジットカード決済関連の年間処理件数も過去10年間で約4倍の約126億件に増大するなど、日本のクレジットカード決済における重要なインフラを担う存在だ。
システム稼働リスク可視化ソリューションの導入イメージ図(出典:日立製作所)
今回の試行で採用されるシステム稼働リスク可視化ソリューションは、AIの機械学習技術を活用してネットワーク上のデータの流れを分析する。これまで発見することが困難だったシステムの速度低下や機器のサイレント障害(IPネットワーク上で発生する、エラーとして検知されない障害の総称)など潜在的なリスクの早期検知に役立てられる。
具体的には、通常時のシステムデータの流れを機械学習させ、稼働システムの動きと比較することで、通常とは異なる挙動を精緻に監視することができる。また、ネットワーク機器に起因するシステム障害リスクもあらかじめ把握できるため、障害発生の未然防止を図ることも可能とする。
さらに、万が一の障害が発生した場合には、ネットワークデータや周辺機器などの情報を自動で分析し、検知したリスクの要因を推定する。これにより、障害が発生した箇所や要因を絞り込めるほか、障害箇所から影響を受ける接続先を容易に把握でき、復旧までにかかる時間を最小限にすることができるという。
日本カードネットワークは、クレジットカード決済データの流れを分析・監視することで、システム障害リスクをあらかじめ把握して障害発生の未然防止を図る。障害が発生した場合にも、復旧までにかかる時間を最小限にすることでシステムの安定稼働と決済サービスの品質向上を目指す。
なお、クレジットカード決済データの流れの分析に当たっては、個人情報をはじめとする重要情報を含まない通信データの送信先などのヘッダ部分のみを用いて分析を行っているとのこと。
今後は、障害が発生した場合の復旧手順を事前に登録し、自動実行する仕組みを検討するなど、復旧作業の効率化にも取り組むとしている。