2018年には、クラウドがスタンドアロンのワークロードを実行するためのものから、基幹アプリケーションを実行する環境になっていき、それに伴って先駆的な企業がマルチクラウド戦略を形式化すると予想される。このため、2017年にクラウドへの展開がビッグデータの新たな論点になると予想されていたように、2018年にはマルチクラウドが論点として浮上してくるだろう。Amazonの「RDS」サービスで、Oracleのデータベースを実行する際の料金が2倍に引き上げられた背景には、この問題がある。また「Amazon Aurora」が、Amazonでもっとも成長が早いサービス(以前は「Redshift」だった)になったのも、これが理由だ。
マルチクラウドに関する判断は、クラウドベンダーへのロックインを避けるための消極的な判断ではなく、プラットフォームの選択になる。仮にOracleデータベースやHadoopクラスタを「EC2」で実行することを選んだとしても、「Azure」や「Google Cloud」の価格が下がれば、再検討の余地がある。
しかしAuroraや「Cosmos DB」、「Google BigQuery」、Oracleの自律データベース「18c」、「IBM Analytics」の中から1つを選ぶことは、単なるクラウドの選択ではなく、データプラットフォームの選択になる。特定のクラウドでネイティブなデータプラットフォームを動かすことによる付加価値を選ぶのか、特定のクラウドプロバイダーに依存するリスクを重視するのかを選択することになるわけだ。これは、以前のOracleと「SQL Server」のどちらを選ぶのかという判断に似ている。
そしてこれこそ、AmazonとMicrosoftがデータベース移行サービスをタダ同然で提供している理由だ。AmazonやMicrosoftは、企業のデータベースを欲しがっている。2018年には、Google CloudやOracle、IBMなども、採算度外視のデータベース移行サービスを客寄せのために積極的に展開すると予想されるため、多くの企業で、どのクラウドに何を置くかが重要な議題になるだろう。
マルチクラウド戦略は、ハイブリッドクラウドの管理方法を検討している組織にも関係してくる。規模に関わらず、1つのクラウドだけに依存する企業はほとんどないと思われるが、クラウドに全面的に移行する企業も(スタートアップを除けば)やはり少数に止まると予想される。設計上の観点、あるいはデータ主権の観点から、秘密を要する顧客情報をオンプレミスに止めながら、透過的にクラウド上でアナリティクスを実行できるかどうかが、クラウドプラットフォーム選択の重要なポイントになるだろう。
データパイプラインがリアルタイム処理の中心的課題になる
米ZDNetは、2017年に「IoTはリアルタイムストリーミングを最重要課題に押し上げる」と予想した。George Anadiotis氏は2018年の予想として、ストリーミングだけでなく、「その場で分析する」ことが主流になると述べている。
ストリーミングアナリティクスは新しいものではないし、その再生については、これまでもいくつかの記事で説明してきた。ストリーミングはデータを永続的に保存する前の構文解析やフィルタリングにも、パターンやイベントの検出にも利用できる。IoTデータの爆発的な増加は、すべてのデータを保存すべきかという問題だけでなく、それをどこで処理するかという問題も提起している。