デロイト トーマツ グループは、グローバルで実施した「第四次産業革命への対応準備調査」について、日本企業の調査結果を発表した。世界的に見ても第四次産業革命による機会をフルに活用し得る企業は、現時点においてごく一握りであるという。調査結果には、以前からのビジネスの延長線上で第四次産業革命を捉える姿勢が表れており、特に日本企業はその傾向が顕著に見られた。
この調査は、フォーブス・インサイトがデロイトグローバルの協力で、2017年8月に米国、アジアおよび欧州の19カ国の「最高責任者(CxO)」レベルの役員1603人を対象に実施(うち日本は100人)したもの。回答者は10億ドル以上の収益を上げている企業(平均74億ドル)で、10業種にわたる。
日本企業の主な調査結果は以下の通り。
第四次産業革命の機会を十分に活用することに「大変自信がある」はわずか(日本:3%、全世界:14%)
日本および世界の経営幹部の大多数は「第四次産業革命が社会により多くの平等と安定をもたらす」と考え(日本:91%、全世界:87%)、また、企業は、社会に最も大きな影響を与え得ると考えている(日本:公開企業70%、非公開企業:64%、全世界:公開企業74%、非公開企業67%)。
第四次産業革命に期待する割合は高い(日本:91%、全世界:87%)
第四次産業革命を自社が市場変革、開拓する機会と捉えていない
自社が多大な影響を与え得る課題領域としては、「顧客への最良の製品/サービスの提供」「短期的または長期的な財務成績の向上」といった企業の以前からの役割に回答が多く集まっており、市場、教育、環境などの社会的課題に大きな影響を及ぼすと考える経営者は少数にとどまっている。
特に日本の経営幹部はこの傾向が強く、「公正で開かれた市場の実現に向けた改革の推進」(日本:9%、全世界:24%)、「商品・サービスへのアクセス向上や低価格化などを通じた未充足ニーズへの対応」(日本:14%、全世界:19%)といった、市場環境の改善への影響についても他国企業よりも低い認識となった。
「貴社は次の課題解決に影響を与えることができますか?」との問いに対する「多大な影響を与えることができる」の回答割合(%)
最新技術を競争上の差別化要因と考えていない
「最新技術は競争上の主要な差別化要因と考えるか」と尋ねたところ、日本の経営幹部の回答は「強くそう思う」が5%、「そう思う」が17%となり、全世界の回答(「強くそう思う」=20%、「そう思う」=37%)と比べて低い割合だった。最新技術に対する考え方は、第四次産業革命に備えるために必要な投資に対する意欲の高さを表すものだが、日本の経営幹部の78%は「どちらでもない」と様子見の姿勢で、グローバル市場での成長に大きく水をあけられるリスクが浮かび上がった。
テクノロジを効率化に活用しているが、「労働力の変化」に注目した本質的な議論は尽くされていない
高齢化や働き方改革を背景に、日本の経営幹部は調査対象国で最も多い85%が、従業員との関係が契約による一時的、臨時的な雇用に変わる方向にあると見ている(全世界:61%)。また、75%以上がロボットなどの自律的なテクノロジが人に代わる未来を予測する(全世界:50%以下)。しかし、人材採用・育成については他のテーマに後回しにされ、経営幹部が議論することは少なく(下図)、最新テクノロジの活用についても、技術主導型の変化が組織構造と従業員に及ぼす影響について、計画し対処できると考えている経営幹部はわずか3%(全世界:7%)だった。他方、最新テクノロジについては専ら従業員の効率性向上での活用に関心が向けられており、この点に関して組織として「高い能力がある」とした回答者が78%にのぼる(全世界:47%)。
「この1年で最も頻繁に議論をしたテーマ」に対する回答(最大5つの複数回答、%)