保険企業各社はデジタル変革に向かうなか、台頭しつつある人工知能(AI)テクノロジを用いて自社の運営を改善するという革新的な機会を手にしている。ただ、運用面の効率化と顧客エンゲージメントのバランスを取ることは、パンに塗るピーナッツバターとジャムの最適な配分を見つけ出すのと同じくらい難しい。しかし筆者は多くの保険会社が、少なくとも適切な指針を得てこの作業に取り組んでいくと確信している(指針が記されたForrester Researchの有償レポートはこのページから入手可能)。
AIに対するこのような投資をどのように進めていくかを決定する際には、発生し得るリスクの管理や詐欺行為の検出から、顧客ニーズの把握や、顧客のエクスペリエンスに対する期待を満足させる保険商品やサービスの調達方法の理解に至るまで、考慮することがたくさんある。Forresterは、保険会社における運用面での効率化と、顧客エクスペリエンス(CX)面の向上のために役立てられる12のAIテクノロジとソリューションを洗い出し、レポート(有償)として発行している。現時点において、AIはまだ保険業界に完全に浸透していない。しかし保険会社は現在、大きく分けると以下の4つの領域でAI関連の取り組みを続けている。
- テクノロジを軸にしたエクスペリエンスへの注力:エクスペリエンスに関係するAIテクノロジには、仮想アシスタントや音声分析、リコメンデーションエンジンといったものが含まれる。これらのテクノロジは、顧客サービスや、保険商品の選択に関するアクティビティで採用されている。
- テクノロジを軸にした運用への注力:運用に関係するAIテクノロジには、テキスト分析や、先進的アナリティクス、顔および画像認識、機械学習(ML)、自然言語生成が含まれる。これらAIテクノロジの大半は、運用面の効率化を目指すために採用されている。とは言うものの、顔認識とMLは保険会社のリスクを低減するために用いられている。
- ソリューションを軸にしたエクスペリエンスへの注力:エクスペリエンスに焦点を当てた2つのAIソリューションによって、ポジティブな顧客エクスペリエンスの提供に力が入れられている。これらソリューションは複数のAIテクノロジを組み合わせ、対話型のソリューションと業界向けの訓練済みソリューションを作り出すというものだ。後者のソリューションは、社内の顧客向け担当者を訓練するためにも用いられている。
- ソリューションを軸にした運用への注力:MLが成熟するとともに、保険会社は深層学習(DL)のソリューションを生み出すために、MLと他のAIテクノロジを組み合わせるようになってきている。現在のところ、リスク管理がDLソリューションの主な領域となっている。
これらの領域それぞれには強みと弱みがあるものの、どのAIテクノロジに投資するのかという問題における最も重要な観点は、会社のニーズが何かというところにある。こういったAIテクノロジに対して投資する人間は、会社に最も大きな利益をもたらすものが何かを熟考し、その目標を達成するために最も役立つテクノロジを見極める必要がある。AIテクノロジによって会社は目に見えない障壁を打ち破り、クライアントにより一層力を入れていけるようになる結果、デジタル変革に向かう業界において適切な舵取りをしていけるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。