インフラ自律化の導入・運用で考慮すべきポイント
最後に、インフラ自律化の導入・運用で考慮したいポイントについて解説します。
・障害時の原因追究に時間を費やさない
従来のシステム障害では、障害把握から原因分析、対処方法というステップで進み、原因の究明に大半の時間を費やしているのが実情ではないでしょうか。ITインフラの自律化では、原因分析である程度の障害部位が判明すると、その部位を切り離して別系統に切り替えるといった振る舞いのデザインをします。
また、開発サイクルに障害訓練を組み込んだり、2系統を切り替えてデプロイメントする仕組みを組み込んだりすることもあります。障害対応では、トータルの失敗コストを限りなくゼロにするような目標設定がポイントになります。
・セキュリティのオーケストレーションは必須と考える
情報セキュリティはインフラ自律化と併せて考えるべきポイントです。ITインフラの選択肢が増えたことでセキュリティ管理が複雑化しないように考慮が必要だからです。また、平時、有事を問わず、監査ログの収集から分析、レポーティングまでの一環の作業は、MAPEループに似ているので組み込みやすいものです。
・可搬性の高いアプリケーションを選択する
インフラ自律化に適したアプリケーションは、季節や期間によってデータの処理量やシステムの負荷が一時的に増加するワークロードなどです。その恩恵を受けるためには、可搬性の高さをアプリケーションの非機能要件として定義しましょう。アプリケーションの改修コストが予算に見合わなければ、インフラ自律化に向いていないと判断しましょう。
・人でしかできないことを明確にする
現段階では、人に適した作業と機械に適した作業の切り分けや、どのように協調するかといった判断は、人でしかできない管理のポイントとなります。また、技術以外の課題として、費用とのバランス、標準技術の選定、法制度の整備や対応なども、人でしか対応できません。
ITインフラの自動化に取り組む際は、最初から完全な自律化を目指すのではなく、まずは利用者の業務を補完することを目指すといいでしょう。そうすることで、身の丈に合ったインフラ自動化の形が見えてくるでしょう。
次回はデータベースの自律化運用に焦点を絞って解説します。
- 内村友亮(うちむら・ともあき)
- 日本オラクル クラウド・テクノロジーコンサルティング事業本部 テクニカルマネージャー
クラウドプラットフォームのコンサルティングサービスを担当するチームで、クラウドシフト支援やデータ高度活用支援などのサービスを展開する傍ら、『即戦力のOracle管理術』(ISBN 978-47-7415-134-2)、『Oracleの現場を効率化する100の技』(ISBN 978-47-7417-332-0)、ブログなどで技術情報を発信している。