ServiceNow Knowledge

「MeToo」動向で従業員と雇用主の関係に注目集まる--HRテックの課題

末岡洋子

2018-05-11 10:08

 ServiceNowはITサービス管理(ITSM)でスタートし、ITオペレーション、カスタマーサービス管理、セキュリティと、技術の適用分野を拡大しているが、急成長分野の1つが人事(HR)だ。5月11日まで米国ラスベガスで開催された年次イベント「Knowledge 18」で、HRエバンジェリスト兼トランスフォーメーションリーダーを務めるJen Stroud氏に、人工知能(AI)をはじめとした人事テクノロジ(HRテック)のトレンドについて話を聞いた。

――:HRトランスフォーメーションリーダーの役割について教えてください。


ServiceNow HRエバンジェリスト兼トランスフォーメーションリーダーのJen Stroud氏

Stroud:HRトランスフォーメーションリーダーは米国に5人、欧州に2人の合計7人おり、企業の人事のトランスフォーメーションを支援するのが仕事だ。私自身、人事担当としてServiceNowの顧客だったこともあり、人事と同じ目線で会話ができる。顧客が人事面で抱えている問題は何か、従業員体験をどのように変えたいのかなどを聞いて、“ジャーニーマップ”を作成する。その後、初めてServiceNowがどのように支援できるのかの話になる。

 どの企業にとっても人事は戦略的な部門となっており、トランスフォーメーションは重要な課題となっている。

――:人事ソリューションのターゲット顧客は既存顧客になるのでしょうか?

Stroud:ServiceNowが人事を完全な製品として提供するようになったのは約2年前からだ。顧客数は既に700社を上回るレベルだ。ITSMなどの既存顧客が人事にも拡大するケースが、入口としては最も多いが、最近は人事でServiceNowを初めて導入したという顧客も増えている。

 人事製品は独立して受け入れられており、独自のメリットを持つ。HRが購入して肩入れし、ITがそれを見て、ITを導入するという逆の流れも見られる。

――:顧客は人事でどのような課題を抱えているのでしょうか?

Stroud:よく聞く課題の1つが、オンボーディング(新入社員の定着)だ。新しく会社に入った人が必要とするものが一貫性のある形で最初からそろっており、すぐに生産性を上げ、戦力となるためにデジタル的にどのような施策ができるのかに関心がある。

 また、社員とのコミュニケーションやタスクの管理も課題だ。社員同士の主なコミュニケーション手段がメールというところは多い。メールと電話の管理は難しく、自分がどのようなタスクやイシューを抱えているのかについて、可視化が得られない。日常レベルでの基本的な課題として、「従業員とのインタラクションをどのように管理するか」「より組織化された方法で管理できないか」がある。可視化できれば、解決までの時間を短縮し、満足度が上がる。

――:人事は技術のプロではありません。デジタル化への抵抗は?

Stroud:人事は確かに技術のプロではないが、家庭ではデジタル技術に触れており、ここ数年でデジタルへの理解は進んでいる。

 ServiceNowは普通の人が使えるソリューションを作ることを大切にしている。これは創業者の哲学であり、人事も含まれる。ソリューションの実装ではIT部門の支援が必要だが、基本的な変更、設定変更などはIT部門がいなくてもできる。IT部門への依存が弱まるので、人事からの評判はとても良い。

――:コアHCM(Human Capital Management)ベンダーとの関係は?

Stroud:ServiceNowはエンゲージレイヤを提供する。戦略としてコアHCM機能を我々が提供することはない。

 Workday、SAP、OracleなどのコアHCMベンダーと連携が可能だが、中でもWorkdayでは統合を組み込んでいる。Workdayの顧客がこのプラグインを利用するケースが多く、共通の顧客にとっては迅速に実装できる便利な機能となっている。WorkdayとServiceNowはお互いの製品を使う顧客の関係でもある。

 今後はSAP(SuccessFactors)やOracleなどについても、同レベルの統合を行っていく。

――:人事から要求が多い機能でトレンドはありますか?

Stroud:「#MeToo」が世界的に広がっているように、従業員が組織内でテクニカルではない問題を抱えているケースがある。新しい問題ではないが、企業は対応に真剣になっている。問題を抱えている従業員が、匿名あるいは実名で伝えることができるような仕組みを構築しようとしている。

 ServiceNowは、企業と従業員の関係でケースを上げることができる。例えば、企業が詐欺行為に該当することをやっていると従業員が感じた時、ケースを匿名または実名で上げることができる。実名でしかケースを上げられないように設定することも可能だが、従業員は自分の意見を聞いてほしいが、名乗りたくないということがある。ServiceNowは匿名か実名かのどちらか、または両方から選択できるように設定できる。

 オンボーディングに加えて、従業員が会社を辞める時のオフボーディングも課題だ。オンボーディングの逆だが、自らの意思で退職する場合、やむなく解雇する場合などがあり、すぐに処理をする必要があることが多い。オフボーディングの情報が給与計算側に行かず、従業員の退職後も給与を払うことになる。組織が大きくなるほどこのようなケースが多く、無駄に支払われた給与はかなりの額になる。このように、オンボーディング/オフボーディングは法務や財務に関わるもので、処理の時間を短くしたいというニーズがある。

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