本連載では、ビジネスで利用するITサービスの最新動向について、最前線を走る企業への取材を軸に紹介する。複数回で同じテーマを追いかけて、今後注目すべきテクノロジやサービスを取り上げる予定だ。今回は「ローコード/ノーコードプラットフォーム」をテーマにした2回目で、セールスフォース・ドットコムに話を聞いた。
本流サービスのプラットフォームをPaaSとして展開した
ビジネスパーソンであれば「Salesforce」という製品を耳にしたことがあるだろう。1999年に米国で創業したセールスフォース・ドットコムが提供するクラウド型の顧客関係管理(CRM)システムだ。グローバルに展開しており、日本でも世界でも高いシェアを誇っている。
今回、ローコード/ノーコードプラットフォームという切り口で話を聞いたのは、セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアマネージャー 伊藤哲志氏。
「“セールスフォース”という社名なので営業支援ツールのイメージが強いと思いますが、ここ数年で製品構成が一気に広がりました。営業チームをサポートする『Sales Cloud』や、顧客サービスを支援する『Service Cloud』を中核に、その派生製品として、これらのサービス基盤をPaaS(Platform as a Service)として切り出して提供しています」(伊藤氏)
セールスフォースのウェブサイト
セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアマネージャー 伊藤哲志氏
プラットフォーム事業は「Salesforce Platform」という名前でブランド展開しており、「Lightning Platform(旧Force.com)」と「Heroku」という2つのPaaS環境が用意されている。Sales CloudやService CloudもLightning Platform上で構築されている。
Herokuは、Amazon Web Services(AWS)上に構築されており、複雑な環境構築や運用管理が不要なため、コーディング作業に集中できる点が特徴となっている。また、画像認識や自然言語処理などの人工知能(AI)機能を備えた「Einstein Platform Services」も提供が始まっている。
Lightning Platformは、コードを書けない人でも使えるのが特徴だ。情報システム部門だけでなく、営業部や各部門のちょっとITに詳しい人がマウス操作だけで業務アプリケーションを作れる。
「ITに詳しくない中堅中小企業のお客さまも多いので、必ずしもプログラミングやITに明るい人向けに作っているわけではありません。実際、Lightning Platformのマーケティングをしている私もプログラマーではありません。そういう意味では、非常に門戸が広いプロダクトといえます」(伊藤氏)
同社の製品は、大企業を中心に導入されているというイメージがあったが、実は中堅中小企業まで幅広く活用されているという。
「創業当時、コンピュータやITの恩恵を受けられるのは資金的に余裕のある大企業ばかりでした。そこで、我々は中堅中小のお客さまであってもコンピューティングリソースを手軽に使えるように、“ITの民主化”をスローガンにクラウドサービスでビジネスを開始したという経緯があります」(伊藤氏)
営業支援や顧客管理だけでなく、マーケーティングオートメーション(MA)やプラットフォームなどポートフォリオが広がっている