本連載では、ビジネスで利用するITサービスの最新動向について、最前線を走る企業への取材を軸に紹介する。複数回で同じテーマを追いかけて、今後注目すべきテクノロジやサービスを取り上げる予定だ。今回は「ローコード/ノーコードプラットフォーム」をテーマにした第9回目で、「Mendix」のソリューションプロバイダであるビルドシステムに話を聞いた。
aPaaSを提供する「Mendix」
コミュニケーションを軸にスクラム開発を加速するサービス
Mendixは2005年に米国ボストンで設立。2011年ごろから大型の資金調達を実施し、急成長している企業だ。ローコードプラットフォームの「Mendix」を開発しており、グローバルでサービスを提供している。2018年8月には、ドイツのSiemensに7億ドルで買収された。
ビルドシステムは、2016年に販売代理店契約を締結し、Mendixのサービスを国内展開している。ちなみに、今回の買収でもMendixとの関係は変わらず、これまでと同じ体制のままとなる。
「われわれは、国内初のMendix代理店で、市場を作っていくことが役目だと考えている。競合他社とどのように差別化し、アピールするかを心掛けている」と語ってくれたのは、ビルドシステム 高速開発ソリューション部 部長 国吉健一氏。
Mendixで国内初の販売店になるビルドシステムのウェブサイト
Mendixも競合サービスと同様、デジタル変革時代にIT部門が抱える課題を解決すべく、モデル駆動型のaPaaS(Application Platform as a Service)を提供している。最新の技術を低コストで利用でき、開発から展開までのスピードを向上、複雑な業務に対応するアプリケーションを迅速に開発できる。
ビルドシステム 高速開発ソリューション部 部長 国吉健一氏と同 課長 小野寺未央氏(左から)
Mendixの一番の特徴は、アプリケーションを開発する際のコラボレーション機能にある。ポータルサイト上では、要望を出す側であるビジネス部門が提示した要件を、技術部門が分解して実際の開発タスクに落としていく。
「スクラム開発の工程を追いかける機能や構成管理機能の『Subversion』も搭載しているので、プロジェクトの管理ツール別に用意する必要がない。プロトタイプを作るところからスタートして、現場のビジネス側と開発する技術側がどんどんコミュニケーションしながら、スクラムを進められるのが特徴だ」(国吉氏)
Mendixの特徴は、開発ポータル上でビジネス部門と技術部門がコミュニケーションしたり、進捗を管理したりできる点にある
アプリを開発する工程の管理やコミュニケーション機能を備えている点がユニークだ。このことからも分かるように、Mendixは現場のビジネスパーソンが自分たちで複雑なアプリケーションを作成するのは難しい。
「プログラミングは不要だが、複雑なアプリケーションだとシステムエンジニアくらいのレベルでないと作成できない。システムの設計ができる人たちが、少数で高速開発できるツールというイメージになる」(小野寺氏)
いわゆる“シチズンデベロッパー”向けではなく、あくまでも技術部門のような開発者を対象としている。もちろん、シンプルな要件のアプリケーションであれば、現場のビジネスパーソンでも開発できるとのこと。
そもそも、ビルドシステムは1995年に設立され、受託開発業務を主に手がけてきた。社員数は40人で、そのうち35人がエンジニアという構成だ。それなのに、ローコード/ノーコードプラットフォームを扱うようになったのはなぜなのだろうか。
「今後、デジタル変革によってアプリケーションの数が爆発的に増えていく中で、開発者が大幅に不足することは明らかだ。仮にわれわれが受託したとしても、そんなにたくさんのリクエストを受け切れない。どうやってお客さまの要望をクイックに実現するのかを考えたときに、これまでとは全く違うスピード感で開発しなければいけないというのが出発点にある。今後ビジネスとして見たときに、スクラッチで開発するのではないはずだと考えた」(国吉氏)
そんな課題意識から、2012~2013年ごろからさまざまなプラットフォームを調べ、試したという。もちろん、スピードを重視しているのだが、それ以外にも顧客のニーズに応えるために、メーカー側のサポートや機能改善も重要になる。2015年当時、Mendixは日本でほとんど知られていなかったが、既にグローバルでは高い評価を得ているローコード/ノーコードプラットフォームの一つだった。
そこで同社からコンタクトを取り、日本で初となる代理店契約を締結した。Mendixは当時、アジア向けに展開していなかったのだが、それぞれハードルをクリアしていったそうだ。
「Mendixの本社は米国だが、技術部門はオランダにある。われわれの技術部から問い合わせをしたときの反応は早く、マーケティングのバックアップもしてもらっている」(国吉氏)