本連載では、ビジネスで利用するITサービスの最新動向について、最前線を走る企業への取材を軸に紹介する。複数回で同じテーマを追いかけて、今後注目すべきテクノロジやサービスを取り上げる予定だ。今回は「ローコード/ノーコードプラットフォーム」をテーマにした第3回で、今回は「FileMaker」を提供するファイルメーカーに話を聞いた。
1985年から進化を続けるFileMakerはiPhone/iPadにも対応
今回紹介するのは老舗ツール「FileMaker」
古くからPCを使っている人は「FileMaker」という名前を聞いたことがあるのではないだろうか。もともとはカード型データベースソフトで、初版が発売されたのは1985年。当時はMaciontosh向けの類似製品がなく、日本語環境でも快適に使えたそうだ。1995年にWindows 95が発売されたことを受け、その翌年にWindows版をリリース。Windows市場でもリーダーシップを取った。現在、年間契約のアクティブユーザー数は100万以上。しかも、日本はその中でも20~25%のシェアを占めている。これは古くから展開するグローバル企業としては、とても高い数値だ。
今回、ローコード/ノーコードプラットフォームというテーマで話を聞いたのは、ファイルメーカー マーケティング部 荒地暁氏。
FileMakerは時代とともに大きく進化を遂げている。現在は、iOS(iPad/iPhone)、macOS、Windows、ウェブで動作するアプリを作成して運用できるプラットフォームとなっている。なお、同社では、FileMakerで作成したアプリを「カスタムApp」と呼んでいる。FileMakerでカスタムAppを構築すれば、複数のデバイスでシームレスに動作するというのが大きな特徴だ。カスタムAppを作るのにプログラミングをする必要もない。
ファイルメーカー マーケティング部 荒地暁氏
「一般的なツールですと、それぞれのOSに対応したアプリを個別に開発します。FileMakerであれば、一度の開発工程で済みます」(荒地氏)
FileMakerを使えば、業務の一部で使われるものから、業務全体を支援するものまで、ビジネスで必要になるアプリは大体作れるという。モバイル環境にも対応できるし、外部データベースとの連携も可能だとしている。
ファイルメーカーのウェブサイト。やはり少しAppleぽいイメージだ
コードなしにドラッグ&ドロップでカスタムAppを作れる
2018年5月16日には、最新版「FileMaker 17」がリリースされた。カスタムAppの開発を支援する「Starter App」といった新機能を搭載し、iOS端末のセンサも利用できるようになった。例えば、端末の位置情報を関数で取得すれば、顧客先の近くに来たときに通知する機能をアプリに実装できる。また、レイアウトモードも一新され、アプリに配置するフィールドも設定しやすくなっている。
デスクトップソフト「FileMaker Pro Advanced」でカスタムAppを作成する。多数のサンプルが用意されているほか、Excelファイルをドラッグ&ドロップで取り込んで、それをもとにカスタムAppを開発することもできる。
また、少々手間は掛かるが、一から作り込むことも可能だ。実際に使ってみたところ、操作は簡単でオンラインヘルプも充実しているため、特に悩んだり迷ったりすることはない。レイアウトや機能などは非常に細かく設定することができる。その反面、ある程度は操作に慣れる必要がありそうだ。
FileMaker Pro 17 Advancedでサンプルアプリを作ってみる
データを登録する。ドラッグ&ドロップでも操作できる
作成したアプリとデータのファイルをアップロードする
スマートフォンで開くと、リアルタイムに同じデータを利用できる
もちろん、スマートフォンからデータを追加することも可能