SAPジャパンは5月25日、企業によるIoT導入を支援するパッケージとして「SAP Leonardoアクセラレーター」の提供を日本市場で本格的に開始したと発表した。今後の企業の取り組みとしてデジタル変革が重要とする中で、センサを通じたIoTの取り組みで得られたデータと基幹系システムをつなぎ合わせ、ビジネスプロセスを構築できるようにする。製造業のほか、自動販売機などを展開する消費財メーカーなどの導入も進んでいるという。
企業のデジタル変革を阻害している要因として、SAPジャパンの常務執行役員でデジタルエンタープライズ事業担当の宮田伸一氏は「実験から先に進まない」「限定的な実装」「巨大過ぎるプロジェクト」「放棄してしまうこと」だと説明する。Leonardoアクセラレーターは、こうした状況を解決し、必要なIoTシステムを素早く導入するためのパッケージシステムだ。
例えば、企業が自社の機器の異常振動をとらえたり、故障時期と確率の予測ができるようにする。宮田氏は「これだけなら他社と差別化できない」とした上で、ここから、社内にいる修理担当者のアサインや修理部品の管理と引き当て、修理指示の実行など「ERPなどと連携したビジネスプロセスをつくれることがわれわれのIoTの強み」と話している。
SAP Leonardoは、SAP Cloud Platform上に、ビッグデータ、機械学習、データインテリジェンス、IoT、ブロックチェーン、アナリティクスといった技術を搭載させたテクノロジ体系だ。今回は、IoTに焦点を当て、その導入を高速化するアクセラレータを提供する。
SAP Leonardoが提供する機能
アクセラレータは業種別と業務別の2つに分かれている。業種別では、組み立て製造、小売り、消費財、化学、公益、旅行と輸送、スポーツなどに分かれている。一方、業務別では、予防保全などのPredictive Maintenance and Serviceのほか、Asset Intelligence Network、Connected Goods、Global Track and Trace、Distributed Manufacturing、Vehicle Insights、Digital Manfacturing Insightsなどを用意する。
SAP Leonardoアクセラレーターは業種と業務の2つの軸からなる
業種別と業務別を掛け合わせたエリアそれぞれに、既に導入企業が存在しているという。例えば、組み立て製造業とPredictive Maintenance and Serviceのエリアにおいて、ある導入企業は、デジタル技術を活用することで販売後に製品の状態をIoTを活用して把握し、新サービスを創出、売り上げ増を目指すという将来像を持っているという。
そこでの課題は、導入企業が求める品質や高い稼働率などの要求を満たすことや、サービスを通じた競合差別化などだ。販売、生産、サービス、保守、新事業開発など各部門や代理店が連携したシステムを導入する必要があり、複雑化する傾向があるが、Leonardoアクセラレーターにより容易に導入できるようにする。
SAPによると、パッケージであるLeonardoアクセラレーターによって顧客と開発を進めることにより、目指すIoTシステムの80%程度を構築できるという。残りの20%程度は、導入企業の自社固有案件の部分であることが多く、コンサルティングファームやシステムインテグレーターの力を借りて開発することになる。