セキュリティの信頼関係が失われる--カスペルスキーCEOが語った懸念

國谷武史 (編集部) 2018年06月12日 14時42分

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Kaspersky Labの最高経営責任者のEugene Kaspersky氏
Kaspersky Labsの最高経営責任者のEugene Kaspersky氏

 ロシアのセキュリティ企業Kaspersky Labの最高経営責任者(CEO)を務めるEugene Kaspersky氏が6月12日、都内で日本のメディアの質疑に応じた。ロシア政府の諜報活動に同社が関与したと疑う米国政府などに対する見解を語った。

 米国では、2016年に実施された大統領選挙におけるロシア政府の諜報や妨害などの疑念から、サイバーセキュリティが国家的な懸念事項となっている。米国政府は、ロシア政府の活動にKaspersky製品が利用されたとの見方から同年12月に、政府機関におけるKaspersky製品の使用禁止を決定する事態に至っている。

 同社はロシア政府の関与を否定し、米国政府の疑念に反論を繰り返している。同年10月には透明性の向上に向けた取り組みとして「Global Transparency Initiative」を発表。2018年5月には具体的な施策として、スイスのチューリッヒに「Transparency Center」を設置し、第三者による製品の監査やユーザー関連情報の処理などを実施していく体制を構築すると表明した。Transparency Centerは今後、北米とアジアでも開設を予定している。

 Kaspersky氏は、サイバーセキュリティを取り巻く懸念事項の中で、国家間や企業間の信頼関係が失われつつあると述べた。諜報をめぐる米国とロシアの政府間対立や「保護主義」を掲げるTrump政権の方針などを背景に、同社が地政学的な混乱の真っただ中に立たされたとの見方を示し、米国の一部のセキュリティ企業がKasperskyを名指しで批判した行為にも、「騒ぎにただ乗りする残念な行為」と話す。「当社が逆の立場だったら、批判をするような真似は絶対にしない」とした。

疑念に対しては透明性を高める取り組みを進める
疑念に対しては透明性を高める取り組みを進める

 同氏は、現在のKasperskyが置かれた状況が、こうした要素の複雑な組み合わせによって、もたらされたものだとする。改めて同社のビジネスが、一貫してサイバーセキュリティの脅威からユーザーを守るという方針に基づいた正当な取り組みだとし、現在は「Global Transparency Initiative」に基づく取り組みを各国の政府機関などと対話を通じて説明していると述べた。

Kaspersky Labs公共問題担当バイスプレジデントのAnton Shingarev氏
Kaspersky Lab公共問題担当バイスプレジデントのAnton Shingarev氏

 質疑に同席した公共問題担当バイスプレジデントのAnton Shingarev氏は、米国を除く英国などの欧州各国やシンガポールなどのアジア諸国とは、継続的な対話を通じて同社の取り組みに対する理解を得ていると説明。スイスに最初のTransparency Centerを設置するのも、スイス政府との対話から実現したものだという。しかし、米国政府とは一切の対話がないといい、Shingarev氏は「当社側はいつでも説明できる準備をしているが、米国側が門戸を開いてくれない残念な状況にある」と話した。

 またKaspersky氏は、中国やロシアなどの政府が欧米のソフトウェア企業に対してソースコードの開示を要求したとされることも、サイバーセキュリティをめぐる国家間の信頼関係が失われた結果との見方を示した。「最近ではブラジル政府が同様の要求を行い、当社ではブラジルの担当者が製品のソースコードを検証できるように対応した。Global Transparency Initiativeの取り組みを通じて各国政府の疑念に当社の正当性を証明していくしかないと考えている」(Kaspersky氏)と語っている。

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