本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、名古屋大学の天野浩 教授と、NTTデータ経営研究所の加藤真由美 シニアマネージャーの発言を紹介する。
「日本独自の窒化ガリウム技術で5Gデバイスを実現したい」
(名古屋大学 天野浩 教授)

名古屋大学の天野浩 教授
ブロードバンドタワーが先頃、都内で8月に予定する第5世代移動通信(5G)に対応可能なデータセンター「新大手町サイト」の開設に向け、インターネットサービスプロバイダー(ISP)を相互接続するインターネットエクスチェンジ(IX)事業者3社とパートナー契約を結んだことを発表した。
これに伴い、同社は5Gに対応したデバイスを日本独自の窒化ガリウム(GaN)技術によって実現しようという総務省の研究開発プロジェクトの取り組みも紹介。同プロジェクトの推進役で、窒化ガリウムによる青色発光ダイオード(LED)の開発で2014年にノーベル物理学賞を受賞した天野氏も会見に登壇。冒頭の発言は、研究開発プロジェクトの推進に向けて強い意欲を示したものである。
ブロードバンドタワーが新データセンターにおいてパートナー契約を結んだのは、3大通信事業者系IX事業者である日本インターネットエクスチェンジ、BBIX、インターネットマルチフィード。新大手町サイトに入居する顧客は、これら3社のサービスから単独または複数を選択して利用することができる。
複数のIXとの接続を構内で行えることで、相手先が接続しているIX事業者を選んで利用することが可能となり、事業者間でのピアリング(直接相互接続)を柔軟に行えるようになるという。
さらに、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の各サービスとのダイレクト接続も予定。これにより、新大手町サイトは日本のインターネットの中心地である大手町において、3大IXおよび3大クラウドとのダイレクト接続が可能なデータセンターとなる。
日本独自の窒化ガリウム技術による5Gデバイスの研究開発プロジェクトの概要については図をご覧いただきたい。天野氏は、「窒化ガリウムは青色発光ダイオードの材料だが、その他にも紫外線発光デバイスや次世代ディスプレイ、電力制御デバイスなどへの活用が進んでいる。そして今回、無線通信での5G基地局用高出力パワーアンプに向けた研究開発を新たにスタートさせた」と説明した。

図:日本独自の窒化ガリウム技術による5Gデバイスの研究開発プロジェクトの概要
さらに、「従来の通信用デバイスで使われているシリコンは今後、高周波デバイスへの対応が難しくなる。これに対し、窒化ガリウムならば高周波に対応した基地局デバイスの実現が可能になる」と力を込めた。5Gに向けた天野氏の活躍に大いに注目しておきたい。

会見での質疑応答の様子。左から、ブロードバンドタワーの藤原洋 代表取締役会長兼社長CEO、天野氏、日本インターネットエクスチェンジの山添亮介 代表取締役社長、BBIXの福智道一 専務取締役兼COO