大塚商会は8月1日、2018年度上期(2018年1~6月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比9.0%増の3898億円、営業利益は1.3%増の271億円、経常利益は1.85%増の278億円、当期純利益は1.3%増の187億円となった。
決算説明に臨む大塚裕司社長
大塚商会の大塚裕司社長は、「業績は順調に推移しており、売上高、営業利益、経常利益、純利益は全て過去最高になっている。だが利益については、計画に対して未達となっている。4~6月ではもう少し改善が進むと考えていた。さらなる改善が必要である」と総括。過去最高の業績にも満足した様子は見せなかった。
2018年第2四半期(2018年4~6月)は、売上高が前年同期比12.0%増の1986億円、営業利益が1.6%増の153億円、経常利益が2.6%増の156億円、当期純利益が2.2%増の107億円となった。大塚氏は「売上高は、四半期ごとに見ても増収傾向にある。経常利益については、第1四半期は横ばいだったが、第2四半期は右肩上がりになっている。複写機の販売不足により、メーカーからの報奨金が減少し、これが結果として仕入れ価格に響き、利益の減少につながっている。一方でPCは、大手企業における大型案件が伸びており、回転がかかりつつある。ここをもっと伸ばしたい」と語った。
上期のセグメント別連結売上高は、システムインテグレーション(SI)事業が前年同期比11.7%増の2419億円。サービス&サポート事業が5.0%増の1478億円となった。SI関連商品の売上高が11.9%増の1833億円、受託ソフトは7.4%増の233億円、サプライが4.3%増の751億円、保守などが6.1%増の713億円となった。
複写機の販売台数は、前年同期比8.5%減の2万3274台。そのうち、カラー複写機が7.1%減の2万2553台。PCは29.0%増の56万1599台。サーバは2.5%増の1万6428台。タブレットを含むクライアント合計では29.0%増の58万4637台となった。
「4~6月だけを見ると、PCは前年同期比39.5%増と約4割の伸びになった。電子情報技術産業協会の統計では、業界全体は1~3月が前年同期比0.5%減、4~6月は6.6%増となっており、それに比べても高い成長となっている」とし、「Windows XP特需の2巡目需要、Windows 10の需要が顕在化してきたこと、Windowsタブレットも1000台単位での受注が出ている。働き方改革を含めて、強い需要がある。2020年1月のWindows 10の延長サポート終了までまだ期間がある。Windows XPの延長サポート終了時には、商品をかき集め、どう納品するかばかりに追われ、あっという間に過ぎてしまった反省がある。だが今回は、この期間を使ってキーとなる社員が中心になり、きちっとソリューションを追加提案する形で臨んでいく」と述べた。
大塚商会の連結の正社員数は前年同期比83人増の8862人、1人当たりの半期売上高は4399万円と、前年同期比で326万円増加し、過去最高になったという。連結子会社のネットワールドの売上高は前年同期比14.1%増の520億円になった。「ハイバーコンバージトインフラ(HCI)、セキュリティなどが堅調に推移した」(大塚氏)という。
大塚商会単体の売上高は、前年同期比8.7%増の3531億円、営業利益は1.4%減の240億円、経常利益は0.1%増の253億円、当期純利益は0.4%増の175億円となった。そのうち重点戦略事業では、オフィス向けサプライ通販の「たのめーる」の売上高が前年同期比3.6%増の802億円、口座数は7.6%増の148万0275口座となった。現在は57万点の商品を取り扱っているという。第3四半期には、10月以降に、たのめーるの20周年記念キャンペーンを行う予定であるとした。
オリジナル統合業務ソフト製品の「SMILE」が8.5%増の64億円、ナレッジマネジメントシステムの「ODS21」が1.9%減の314億円、セキュリティビジネスの「OSM」が6.0%増の368億円となった。ASP(クラウドを含む)は224万人が利用する。サプライと保守契約を含むストックビジネスの売上高は1390億円、構成比は39.4%に達したという。現在、Office 365では、25万人のユーザー数を持つという。「そこそこのウェブ企業の売上げ規模を持っている」(大塚氏)とした。
2018年度(2018年1~12月)の業績見通しは据え置き、売上高が前年比4.2%増の7200億円、営業利益が6.6%増の473億円、経常利益が5.6%増の480億円、当期純利益が1.0%増の318億円としている。「上期が増収増益になったことで、全社員に1万円の増収増益手当を支給した。通期でも、9期連続の増収増益を目指す」とした。
2018年度下期の方針として、「オールフロントでソリューションを生かし、信頼に応える」を掲げ、具体的施策として、「地域営業部主体の運営で、現場力・お客さま接点の強化」「お客さまとの取引品目を拡大およびクロスセル」「働き方改革を推進、支援」、「AI(人工知能)、IoTなどの取り組み強化」「ソリューション提案のさらなる強化」「物流体制の強化」を挙げる。
「2018年度下期は、国内外ともに緩やかな景気回復が継続し、攻めのIT投資や生産性向上、コスト削減ニーズ、人手不足への対応や省人化ニーズがある。また、AIやIoTなどの新たなIT技術への関心の高まり、働き方改革のさらなる進展が見られ、企業IT活用ニーズや省エネニーズは底堅い」(大塚氏)という。
加えて、「働き方改革では関連法案の成立し、勤務状況の把握などの義務化の動きもある。我々が活躍できる場が増えている。大塚商会では、早い段階から働き方改革に取り組んでおり、営業系ではコンピュータ部門の一部でテレワークを開始したり、サポート系では、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やチャットボットを社内導入してきた。自社事例を経験に、お客さまの働き方改革を支援できる。チャットボットサービスによる省人化、RPAサービスによる自動化などの『旬の働き方改革』サービスを提供する。チャットボットサービスは、Watsonが月額15万円で利用できることになる」と語った。
同社では、複合ソリューション推進室を新設。「本来持っている幅広い商材を生かすことができておらず、単品の販売比率が7割を占めている。単品商売では、複合機のように価格競争に陥ってしまい、いくら安くしても売れないという状況になる。一つの商材を加えて提案するだけで業績は大きく伸張する。ベテラン系のマネージャーの成績が落ちており、若手マネージャーの成績が上がっている。市場が変わっており、今までのやり方が通用しなくなっている側面も感じている」と大塚氏。
「オフィス丸ごと提案をするという点でも、変革の時期を迎えている。大塚商会は、9カテゴリーに渡る商材を持っており、クロスセルによって販売を拡大しきたい。この第2四半期を底にして、クロスセルを拡大したい」と述べた。一方で、「『大戦略2』という形で、複数のAIを活用した顧客管理および営業支援システムの構築を開始しているほか、たのめーるで全商材を販売するための改良も行っている。この上期だけで25億円の投資を行っている」などとした。
さらに、物流体制の見直しについても説明。リコーが設立したROホールディングスの33.4%の株式を取得し、これまでのリコーロジスティクスへの委託体制から、リコーロジスティクスに間接的に資本参加することについて次のように述べた。
「株式の取得価格は約30億円。たのめーるの成長を考えると、数年先には新たな倉庫が必要であり、その設備投資ができる安定した企業が必要である。リコーと大塚商会は相思相愛であり、共存共栄を続けてきた信頼関係がある。物流は大塚商会にとって命である。これまでの条件やスタンスを継承する形で資本参加した」(大塚氏)
会見の中で大塚氏は、「この1年間、なぜ、課題がクリアできないのだろうかと悩んでいたが、その理由が分かった。また、できると思っていたものが、できていなかったという実態も分かった。内容については言えないが、そこに手応えを感じている。裏返せば、それを見逃してしまった自分が不甲斐ない。根本的な手を打って、対応していく」とも述べている。
決算説明での主要な資料は下記の通り。