政府主導で進む「働き方改革」。企業における人事部の負担は基本業務に加えて、ますます増えると見込まれている。さらに、今後は労働人口の減少による採用活動の激化など、人事部の責任や負荷は増加し、忙しくなっていくことが予想されている。
「現在の人事部は、採用活動や給与計算、労務対応などの実務をこなすだけになっている。日々のオペレーションを効率化することで、従業員のパフォーマンスを最大化する戦略的な人事に転換すべきだ」――。こう語るのは、人事評価・目標管理を効率化するSaaS「HRBrain」を提供するHRBrainの創業者で代表取締役社長の堀浩輝氏だ。
HRBrain 代表取締役社長の堀浩輝氏
HRBrainは、目標シートの記入や人事担当者の評価などを一元管理することで、従業員の評価業務を効率化するサービス。蓄積されたデータをもとに人材の育成や配置などの人事戦略の策定を可能にする。MBO(Management by Object)やOKR(Objective and Key Result)といった目標制度や評価制度をフォーマットから選択するだけで即日導入できる。また、面談記録を一元管理したり、集計作業を自動化したりする機能も備え、人事評価に掛かるプロセスのおよそ7割を削減可能としている。
例えば、従業員の評価プロセスには、評価シートの作成、配布、取りまとめ、催促、フィードバック、集計など、数多くの単純作業がある。こうした業務のプロセスを効率化し、集めたデータを評価者別などさまざまな切り口で分析できる。
「HRBrainとは、端的に言えば、目標設定と人事評価のプロセスを効率化、可視化するサービス。目標設定と人事計画は経営において両輪である。この2つがうまく回れば事業は伸びていくが、そうでなければ立ち行かないだろう。これまで非効率で不透明だったこれらの領域を大きく変えていくポテンシャルがある」
同社が9月に発表した意識調査によると、目標管理シートに「Excelなどのドキュメント」を使用している企業は52.9%、「メモや紙」は20.0%だった。いまだにExcelや紙で目標管理を行っている実態が明らかになった。
また、データをクラウドで一元化することで、「ストーリーのある対話」が可能になる。例えば、異動したばかりの従業員を評価することは困難だが、入社してからのデータを蓄積していれば、成長戦略を描きやすくなる。個人の成績を時系列で見れば、パフォーマンスの変化に気付いて人材流出を予防するための対策を進められる。
実際、意識調査では、約8割の会社員が、面談や提出の直前になって、その場しのぎの目標設定をしたことがあると回答。目標を振り返るタイミングが少ないなどの理由から、目標への意識が低い原因となっているという。
「会社からの期待が明文化され、それをもとに評価される。その連続が大事だが、これまで非効率だった。ここが改善されてガラス張りになることで、目標への意欲が上がる」
HRBrainを導入したサイバーエージェントでは、従業員の目標をこれまで以上にきちんと評価することで、社内にポジティブな感情が生まれ、本人の力が引き出せるようになったという。シムトップスでは、Excelを用いた人事評価と目標管理から脱却することで業務負荷を軽減。従業員一人ひとりに時間を掛けて丁寧に評価できるようになった。従業員同士を比べてみたり、対象社員の前期と比べてみたりして、評価の精度が上がったとしている。
HRBrainは、2017年1月のリリースから1年半弱で300社を超える企業に導入。IT、飲食、美容・服飾、メーカー、流通・小売、金融、不動産・建設、学校、法律事務所など、幅広い業種・業態で利用されている。利用料金は、利用人数が25人までで月額2万5000円、26~50人は同5万円、101~200人は同18万円などとなっている。