モノのインターネット(IoT)とセンサの技術が進歩したことで、従来型のデータセンターから離れたところでデータが収集されるようになった。このため、それらのデータを収集された場所に近いところで処理しなければならないことが増えている。そこで重要になるのが、エッジコンピューティングだ。
データを収集する機器のそばにコンピューティング能力を置くことで、低遅延を生かしてほぼリアルタイムでユーザーに知見を提供することができる。これによって、データの分析や認証などの処理をスピードアップさせることもできる。また、クラウドやデータセンターでさらなる処理を行うために、データセットのフィルタリングを行い、適切なデータだけを送信するのにエッジコンピューティングを利用することも可能だ。
エッジコンピューティングはデータを生かすための技術だが、それにはマイクロデータセンターやアナリティクスプラットフォーム、スマートルータ、ゲートウェイなどのさまざまな技術も必要になる。この記事では、今後注目すべき10社のエッジコンピューティング製品ベンダーを紹介する。
1.Microsoft
エッジコンピューティング市場にとって、三大クラウドサービス(「Amazon Web Services」「Microsoft Azure」「Google Cloud」)は重要な存在だ。Forrester ResearchのアナリストBrian Hopkins氏は、その理由として、これら3つのプロバイダが、IoT製品にエッジやクラウドサービスで分散的に実行されるワークロードを管理するためのエッジゲートウェイやエッジアナリティクス技術を組み込んでいることを挙げている。
Microsoftはこの分野の特許を300件保有しており、その多くがコンテンツのストリーミングに関するものだ。また同社は最近、コンテナモジュール、エッジランタイム、クラウドベースの管理インターフェースなどの機能を持つサービス「Azure IoT Edge」をリリースしている。
2.Amazon
Amazon Web Services(AWS)も、エッジコンピューティングを簡単に導入するためのツールを数多く提供している。例えば「Lambda@Edge」を使えば、サーバをプロビジョニングすることなく、イベントの発生に応じてサーバレス関数を実行できる。また、コンテンツ配信ネットワークの「AWS CloudFront」やIoTサービスの「AWS Greengrass」は、AWSのエッジコンピューティング関連製品ラインアップを魅力的なものにするのに一役買っている。
3.Dell EMC
Dellは2017年10月、同社のIoTに関する製品やサービスを統合する部門を組織し、研究開発に3年間で10億ドルの投資を行うと発表した。同社の重要な製品には、「Edge Gateway」、VMwareの「Pulse IoT Center」、「PowerEdge C-Series」のサーバ、「Isilon」のストレージ、「Pivotal Cloud Foundry」などがある。
同社のIoTラボでは、IoTやエッジコンピューティングに関する複数の取り組みが進んでおり、これには「Project Nautilus」(ストリーミングデータのリアルタイムアナリティクスおよび保存)、「Project Fire」(簡単に管理でき、ローカルコンピューティング、ストレージ、IoTアプリなどを扱うハイパーコンバージドプラットフォーム)、「Project IRIS」(「RSA Security Analytics」のセキュリティ機能をネットワークのエッジまで拡張する)、「Project Worldwide Herd」(地理的に分散したデータのアナリティクス)などが含まれる。
これらの取り組みは、今後IoTやモバイルエッジのためのエッジコンピューティングソリューションを支える技術となるはずだ。Hopkins氏は「モバイルエッジコンピューティングは、広帯域携帯通信ネットワークのさらなる収益化を目指す通信事業者にとって興味深い派生事業だ」と述べている。
4.HPE
Hewlett Packard Enterprise(HPE)は6月、エッジネットワーク製品に40億ドルの投資(当時のレートで約4400億円)をすると発表した。Hopkins氏は、HPEはエッジサービス、ミニデータセンター、スマートルータを提供しており、エッジコンピューティングに必要なツールを幅広く取りそろえている点で魅力的なベンダーだと述べている。特に、エッジにエンタープライズクラスのITを提供するよう設計されたコンバージドエッジシステムである「Edgeline」シリーズは重要だという。HPEは、エッジにおけるOT(運用技術、ここではデータ収集システムや制御システム、産業用システムなどを対象としたものを指す)システムとITシステムのコンバージェンスによって、運用コストの削減とパフォーマンスの向上を実現することを目指している。