富士通がカナダにAI新会社設立--グローバル起点のサービスに

石田仁志 2018年11月07日 11時32分

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新会社のCEOに就任したAIサービス担当・吉澤尚子執行役員常務
新会社のCEOに就任したAIサービス担当・吉澤尚子執行役員常務

 富士通は、カナダのバンクーバーに同社のグローバルAI(人工知能)ビジネスを統括する新会社「FUJITSU Intelligence Technology」を設立、11月1日から事業を開始したと発表した。AI最先端の地である北米に拠点を置き、富士通グループのAI関連の知見や事業の指揮権を新会社に集約することで、AIビジネスを強化する。これを受けて富士通は11月6日に記者説明会を開催し、新会社の最高経営責任者(CEO)に就任した吉澤尚子執行役員常務・デジタルサービス部門副部門長がグローバルのAIビジネス戦略について説明した。

 新会社のFUJITSU Intelligence Technologyは、日本および海外の開発拠点と連携し、富士通全体のAI事業戦略の策定および実行を担う。設立時は社員数13人(うち日本人7人)の小さな組織だが、今後世界の各拠点から人員を集め、現地の人材を採用するなどして、「2020年に150人から200人に増員する計画」(吉澤氏)としている。

 富士通は従来、日本で作ったサービスを各リージョンで販売するという形でグローバルビジネスを展開しているが、今後AI領域の事業は、海外のFUJITSU Intelligence Technologyが中心となり、「日本もリージョンの一つとしてグローバル全体でビジネスを作り上げていく」(吉澤氏)という形の海外起点の事業とする。

日本も一つのリージョンという形になる
日本も一つのリージョンという形になる

 拠点をAIビジネス・研究の最前線である北米に置くことで、日本で動くよりもパートナーシップや技術戦略面などで世界標準のスピードに対応していくことが容易になる。サービスの開発においても、これまでのように日本ばかりに目を向けるのではなく、最大の市場である北米ユーザーのニーズをくんでいくことで、「世界に通用するサービスの開発が見込める」(吉澤氏)としている。そのためには自前主義にこだわらず、積極的に世界の有力なパートナーの製品・サービスの採用、顧客との共創により、「エコシステムを通じてスピード感をもってサービスを開発していく」(吉澤氏)としている。

 サービス展開に当たって、これまでリージョンごとに展開してきたAIのビジネスを、新会社に集約する。その上で、新会社主導で新しいAIソリューションを企画・開発し、グローバル起点で開発した商品やサービス、各リージョンで成功してきたAIビジネスをローカルに展開するという形で、グループ全体のAIビジネスの拡大を図る。

 カナダに拠点を置く理由には、まず政府やブリティッシュコロンビア州政府が最先端のIT技術を推進する政策を実施していることを挙げる。さらに、新会社が立地するバンクーバーの周辺地域には、AIと量子コンピューティングの研究で世界トップクラスのトロント大学をはじめとする多数の研究機関や、多くのスタートアップ企業があり、優秀な人材が集まりやすい環境となっている。実際、富士通のAIビジネスの構成要素となる「デジタルアニーラ」の開発で、トロント大学や、量子コンピューティングソフト開発の1QB Information Technologiesと連携している実績もある。

 この他に、ビジネスを推進していく上での利点も多いとする。MicrosoftやBoeing、Amazon.comなどの大企業も次々と進出し、「パートナーや顧客になり得る企業とのビジネス環境が整いつつある」(吉澤氏)という。何より北米は世界のAIビジネスの最大市場であり、企業のIT投資額は「日本の17倍以上」(同)という状況だ。

 このような環境に拠点を構えることで、周囲との共創、人材の獲得、富士通のテクノロジを掛け合わせ、「AIのデファクトソリューションを開発する」(吉澤氏)としている。

Zinraiとデジタルアニーラを基盤技術として業種別ソリューションを開発していく
Zinraiとデジタルアニーラを基盤技術として業種別ソリューションを開発していく

 AIビジネスのキーになる富士通の技術は、「Zinrai」と「デジタルアニーラ」。

 Zinraiは、富士通が培ってきたAIの技術群。自然言語処理、画像認識、ディープラーニング、トポロジカルデータ解析、説明可能なAIなどの最新テクノロジを備え、人と協調する人を中心としたAI、継続的に成長するAIを目指している。そのAI技術の上に、コールセンターやものづくり、ヘルスケア、Fintech、ナレッジなどのシステムを構築してサービス提供している。

デジタルアニーラテクノロジをチップに搭載したハードウェア
デジタルアニーラテクノロジをチップに搭載したハードウェア

 デジタルアニーラは、量子現象に着想を得たデジタル回路で、「組み合せ最適化問題」を高速に解くことができる独自の新アーキテクチャ。創薬や医療、交通、金融、製造・流通などの領域で適用されている。2018年5月からサービスを開始しており、早くも12月には第1世代の100倍の処理スピードを持つ第2世代製品がリリースされる予定だ。

グローバルに対応するために複数のクラウドサービス上で動くようにする計画
グローバルに対応するために複数のクラウドサービス上で動くようにする計画

 これらのAIソリューションを、クラウドやオンプレミスで提供していく。グローバルでサービスを展開しやすくするために、2019年度から、Microsoft AzureやAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)などのパブリッククラウドを通じてサービス提供を開始するように対応していく。

 AIビジネスの売上目標は、2022年までの5年間累計で4000億円に設定。さらに、「現在10%未満である海外のAIビジネスの売上比率を、20%にまで引き上げたい」としている。

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