NECは、秘密計算を組み込んだシステム開発を容易にする支援ツールを開発したと発表した。今後は同ツールの検証を進め、2020年の秘密計算の実用化を目指す。
秘密計算は、データを暗号化したまま分析処理ができる技術。これを利用して、企業が保有している機密情報を暗号化したままのデータとして結合、分析でき、その分析結果のみを復号、開示する。
現在の秘密計算は複雑かつ膨大なプログラミングが必要となり、一般のエンジニアではシステム構築が難しく、普及や拡大での課題となっていた。今回開発したツールは、プログラミング知識のあるエンジニアなら容易に活用できるといい、データの処理内容を記述すれば、秘密計算に必要な処理コードを生成し、実行することが可能となる。
同ツールは、秘密計算の処理記述・実行エンジンであるSPDZ-2を拡張することにより、秘密計算で実行したい処理内容を、Pythonに似たプログラミング言語を記述するだけで、NECの秘密計算特有の処理コードを自動で生成することが可能となる。単純な集計処理であれば、約30行のプログラム記述から、約4万行の処理コードを自動で生成する。SPDZ-2は英国Bristol大学が開発した秘密計算の処理記述・実行エンジンである。
また、秘密計算のさまざまな統計処理の記述にも対応しているため、あらかじめ決められた一般的な集計処理や分析処理に限定せず、各企業や研究機関などの利用者が望むシステムに合わせた統計処理や分析処理も容易に記述できるという。
さらに、処理内容の記述から並列実行可能な処理を自動的に判別し、同時に処理実行する最適化機能を持ち、専門知識がなくとも記述した処理内容が高速に実行できる秘密計算の処理コードを生成できる。
NECでは、同ツールの利用シーンとして、ゲノムバンクが持つゲノム情報と病院が持つカルテ情報とを安全に結合して分析し、ゲノム医療関連の研究を進めたり、金融機関が保有する取引情報を分析することで不正取引の検知を実行することなどを挙げ、その他に店舗の購買履歴情報を使ったマーケティング分析にも活用できるとしている。