プロ野球選手の試合写真を自動判別--MSのAIで約4時間の整理時間を約30分に短縮

阿久津良和 2018年11月27日 07時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本マイクロソフトと富士フイルムイメージングシステムズは11月26日、人工知能(AI)を活用したスポーツ写真の人物特定機能を開発したと発表した。富士フイルムのクラウド型ファイル共有サービス「IMAGE WORKS」において、Microsoft Azureの機械学習サービス「Cognitive Services」「Cognitive Toolkit」などを活用。

 日本野球機構(NPB)が管理・運営する「NPB CIC(Contents Image Center)」上のプロ野球選手の名前を自動的にタグ付けする「選手名情報自動タグ付け機能」として実装。既に2018年6月から広島東洋カープをはじめとするセントラル・リーグとパシフィック・リーグの5球団で試用を開始しており、2019年シーズンからはNPB CICを導入済みの全球団での利用を予定している。

富士フイルムイメージングシステムズ イメージテック事業部 クラウドメディア営業部 課長 松下太輔氏
富士フイルムイメージングシステムズ イメージテック事業部 クラウドメディア営業部 課長 松下太輔氏

 富士フイルムグループにおいて写真・映像・情報販売を手掛ける富士フイルムイメージングシステムズは、同グループ上で稼働する写真やデザインの管理・共有を可能とするIMAGE WORKSを、2006年から提供中。現在までに国内2000サイト(累積結果。姉妹サービス「SECURE DELIVER」の利用件数も含む)で使用されている。同社顧客であるNPBの要望により、写真のタグ付けを自動化する機能を実装した。同社は「1試合当たり3000枚近く撮影し、その中から価値のある写真300枚程度を抽出して、選手名などのタグ付けを手動で行っている。担当者にアンケート調査を行ったところ、平均試合時間の3時間を超える、約4時間の整理作業が必要だった」(富士フイルムイメージングシステムズ イメージテック事業部 クラウドメディア営業部 課長 松下太輔氏)と説明する。

IMAGE WORKSの「選手名情報自動タグ付け機能」
IMAGE WORKSの「選手名情報自動タグ付け機能」
NPB 総合企画室 参与 兼務 事業本部 事業推進部 参与 吉田伸記氏
NPB 総合企画室 参与 兼務 事業本部 事業推進部 参与 吉田伸記氏

 この処理を「Microsoft AI」と、野球に関するデータを集約することで分析や加工を容易にする「NBP BIP(Baseball Innovation Platform)」のデータとマッチングさせ、90%以上の正解率を実現させている。具体的にはCognitive Servicesに含まれる「Face API」で学習済みモデルを通じた選手の顔認証と、マスコットキャラクターや客席といった他の学習モデルを組み合わせ、分類モデル解析を行う。また、これらの画像解析・推定処理は複数のファンクション(関数)をつなぎ合わせる「Durable Functions」を利用することで処理画像枚数が増えても、処理時間の増加は最小限に抑えられる。最終的には約4時間の整理時間を、担当者による手動の確認作業を含めて約30分まで短縮した。IMAGE WORKS側でも独自の学習モデルを用意し、打撃・投球・守備といったシーンを自動判定している。担当者は「選手の顔が判断しにくく、2割程度は取りこぼしていたが、(一連の仕組みと)公式記録とのマッチングや利き手を判断することで、高い推察力を実現」したと語る。

 NPBによれば、登録写真枚数は54万4000枚(約2TB)、利用申請件数は約6000件、貸し出し枚数も4万6000枚まで増加中。「プロ野球選手の写真コンテンツの需要が高まり、各球団の業務負荷低減が急務」(NPB 総合企画室 参与 兼務 事業本部 事業推進部 参与 吉田伸記氏)とソリューションの導入意義を説明した。同団体は約10億円規模まで拡大するコンテンツ資産の活用先として、「今後はAIによる新たな検索方法や過去画像の商品化、映像データへの拡張、プロ野球ファンが喜ぶ写真販売など、消費者向けへの展開を目指す」(吉田氏)

日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズ本部 本部長 浅野智氏
日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズ本部 本部長 浅野智氏

 日本マイクロソフトはAIの利用について、「本来対応すべき高付加価値業務へ時間の割り当てが可能になる」(日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズ本部 本部長 浅野智氏)と述べつつ、同社が掲げる「理論的なAI」について次の様に語った。「AIはデータの集合体。現在はアジア・日本に特化した画像が少なく、『パイロット』と検索すると白人男性、『医者』なら男性画像ばかりヒットし、AIの回答が平等なのか問われてきた。(ソリューションを通じて)AIの精度も高まり、平等なAIへ近づくことを期待している」。

 また、富士フイルムイメージングシステムズも1年程度で実装した機能を通じて、「今回得た知見を基盤に他のスポーツへも展開したい」(松下氏)と将来展望を語った。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]