ピュア・ストレージ・ジャパンは12月20日、Amazon Web Services(AWS)上で実行される新しいクラウド向けデータサービス群「Pure Storage Cloud Data Service」を発表した。
具体的な機能としては、「Cloud Block Store for AWS」「CloudSnap for AWS」「StorReduce」の3つが含まれる。Cloud Block Storeは制限付きの公開β版を提供中で、正式版は2019年中期の公開を予定し、CloudSnapは既に入手可能だ。StorReduceは近く制限付きの公開β版の提供を開始する予定で、正式版は2019年前半になる予定である。
クラウド・データ・サービス群の全体像
代表取締役社長の田中良幸氏は、同社の創業からグローバルでは9年、日本でも6年という若い会社でありながら既に売上高10億ドル超を達成する急成長中の企業だと紹介、「この先の時代を見据えたデータのあり方/持ち方を、スクラッチから考えて製品やサービスを作っていく」と取り組みを語った。また創設メンバーの1人の米Pure Storage 戦略部門副社長のMatt Kixmoller氏が、新サービスの詳細を説明した。
ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏
同氏はまず、現在の企業IT環境が、オンプレミスとクラウドを組み合わせるハイブリッド環境が主流となっていることを前提とした上で、今後の展望として、アプリケーションもオンプレミス/クラウドで自在に移動する“ハイブリッド・アプリケーション”になっていくとの展望を示した。現状では、オンプレミスとクラウドではさまざま違いがあることから、オンプレミスで稼働するアプリケーションとクラウドアプリケーションは、それぞれ別のものとして開発、実装されていると指摘した。
ストレージ関連の領域でも、データの管理手法や提供される機能などに違いがあり、例えば、オンプレミスで稼働するアプリケーションの多くがブロックストレージを前提としている一方、クラウドアプリケーションではオブジェクトストレージなどが利用されていることから、オンプレミスのビジネスアプリケーションをクラウドに移行させるのが困難になっていると話す。
一方で同社は、コンセプトに“Data-Centric Architecture”を掲げており、単一の統合されたデータプラットフォームであらゆる処理を実現することを目指しているという。このことから、オンプレミスとクラウドの間でアプリケーションが分断されている現状を解消しようと、今回のクラウドデータサービスを実現したという。
Pure Storage 戦略部門副社長のMatt Kixmoller氏
Cloud Block Srore for AWSは、オンプレミスのビジネスアプリケーションのクラウド移行を直接支援する機能で、同社のオールフラッシュストレージ製品に組み込まれて提供されているストレージソフトウェア「Purity」と同等の機能をAWS上に実装したものになる。ただし、単なる仮想アプライアンスではなく、AWS上で稼働するよう最適化されたソフトウェアとして別途実装されており、ユーザーから見た機能や使い勝手は同様であるもの、内部の実装形態は異なるという。
CloudSnap for AWSは、バックアップ環境のクラウド連携を最適化するものになる。現在主流のバックアップ環境は「D2D2Tと呼ばれる構成で、まずはディスクバックアップを作成し、長期保存などの用途向けにはテープデバイスを使う例が一般的だ。この構成では、バックアップ作業は迅速に完了するものの、リストア時にはテープからのデータを読み出すことになるため時間が掛かってしまう。Kixmoller氏は、「本来なら、リストアを迅速に処理したいはずなのに、逆になってしまっている」と指摘する。
そこで同社がCloudSnapで提案するのが、「F2F2C(フラッシュからフラッシュ、さらにクラウドへ)」というバックアップ構成だ。例えば、同社の主力製品である「FlashArray」をプライマリストレージとして運用し、バックアップデバイスとして「FlashBlade」を利用することにより、F2F(フラッシュからフラッシュ)の迅速なバックアップ/リストアが実現される。
さらに、最新のバックアップデータをFlashBladeに残し、アーカイブ用データはAWS S3などの安価なクラウドストレージサービス側に移動することで、コスト効率化も図れるというものだ。なお、CloudSnapを利用してクラウドに移動したバックアップデータは、クラウド上でもオンプレミスでも自由にリストアできるとし、災害対策などのニーズにも対応できるとしている。
最後にStorReduceは、2018年8月に同社が買収を発表した米StorReduceの大規模非構造化データの重複排除技術をベースとしたものとなる。既存の他社製ストレージのバックアップを効率良くクラウドへ移行するための支援機能と位置付ける。
Kixmoller氏は今後の戦略として、「長期的にはユーザーに対し、ハードウェアから切り離された純粋なソフトウェアソリューションとしてCloud Brock Storeのような機能を提供していく可能性はある」とした。データの記録手段としてのストレージハードウェアにはこだわらず、データ管理や活用方法を高めていく「データカンパニー」としてのあり方を目指していくという方針を表明した。
同時に、今回のAWSとの連携に続き、他のクラウドプラットフォームとの連携もあり得るとしている。今回の発表では、「ミッションクリティカルなエンタープライズ・アプリケーションのクラウド移行を実現するためにまずブロックストレージの機能提供に取り組んだ」としたが、一方でファイルストレージやオブジェクトストレージの強化も続けており、最終的には「ブロック/ファイル/オブジェクトの、いずれのストレージでも同等の機能を提供できるようにすることを目指している」とし、「今回の発表はクラウドサービスに関する最初のものだが、最後ではない」と述べ、今後の機能拡張などに含みを持たせた。