この数年で見えてきたように、完全なオンプレミスシステムは将来、公衆電話のような存在になりそうだ。数も減り、まばらにしか見られなくなるかもしれない。その一方で、すべてがすぐにクラウド化されるわけでもない。むしろ、今後当面の間、ほとんどの企業は完全なオンプレミスと完全なクラウド化の間のどこかに位置することになるだろう。
それはいいとして、では、データはどこに置かれるべきだろうか。もちろん、一部はクラウドに移され、一部はオンプレミスに残されることになるに違いない。しかしこれは、今後いくつかの難しい判断を迫られることを意味しており、同時に、データの取り扱い方も再検討する必要が出てくるということだ。このことは、アプリケーションを拡張し、充実させて、これまでは不可能だったことを可能にするためのチャンスにもつながる。
IBMのMarcio Moura氏とChristine Ouyang氏は、Cloud Standards Customer Councilが公開したホワイトペーパーの中で、「ハイブリッドクラウドは、さまざまな立場の人間が、もっとも合理的な場所で、ハイブリッドクラウド環境の中でデータやアナリティクス機能がどこに置かれるべきかを規定する要件を定めるのに役立つ形で、データやアナリティクス機能を利用することを可能にする。その結果として、アナリティクスのワークロードはデータがどこに保存されているかに関わらず効率的に実行することができるようになる」と説明している。
Redis Labsのエコシステムプログラム責任者Dave Nielsen氏は、ハイブリッドクラウドがもたらすデータに関する課題について心配している。同氏によれば、クラウドベースのサービスへの依存が高まれば、新たな種類のデータ管理システムを設計する必要性も高まり、オンプレミスとクラウドの間のどこにデータを置くかが重要になるという。筆者は最近、Nielsen氏に話を聞く機会があった。同氏はその際、「クラウドサービスを利用する際に出てくる課題の1つは、データ管理システムの設計だ。企業が既存のソリューションを使い続けながらクラウドソリューションを導入し始めると、クラウド環境全体をカバーする効果的なデータ管理システムが特に重要になる。データは、どんなフォーマットであっても、オンプレミスやクラウド、マルチクラウド、ハイブリッドクラウドなど、どこに置かれていても、自律的に保守され、流通させることができなくてはならない」と語った。
では、どのアプリケーションやデータをオンプレミスのデータベースシステムに残し、何をクラウドに移すべきかは、どう決めたらいいのだろうか。「データの問題は複雑になる場合がある。一部のデータは公に公開されても構わないが、外部に流出するリスクを冒すことが絶対に許されないデータもある」とNielsen氏は述べている。機密性が非常に高いデータについては、「外界と隔離されたオンプレミスシステムの方が、優れたセキュリティを提供できるかもしれない」と同氏は言う。「機密なデータは、複数の情報源から収集されている可能性があるが、例えば研究など、社内の少数のユーザーしかそのデータを利用しない場合には特に、安全を確保するためにオンプレミスに保存されることが多い」