IBMは340億ドル(約3兆8000億円)でRed Hatを買収することを発表し、クラウド市場(プライベート、パブリック、ハイブリッド)で戦うチャンスを手に入れた。そして、最終的に同社が狙うのは企業のマルチクラウド管理市場だ。
これはIBMの歴史の中でも最大規模の買収劇だが、それには理由がある。これは非常に大きな賭けであり、IBMはすでにパブリッククラウド市場でAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform、Microsoft Azureとの競争で後れを取っている。
大手パブリッククラウドプロバイダーの一角になれないのなら、管理する側に回ればいいのではないか?
つまりそういうことだ。オープンソース界の人間はこの買収について心配するだろうが、同社はこれまで、オープンソース界に対して十分な理解を示してきた。そして企業も、(ソフトウェアとクラウドの永世中立国たる)Red Hatから、IBMとRed Hatの組み合わせに移行して、1カ所で多様なサービスを得られるようになることを受け入れるだろう。
IBM-Red Hatの論理が合理的であることは認めざるを得ない。両社の計画は、ハイブリッドクラウド市場とマルチクラウド環境管理の市場を狙うというものだ。IBMはRed Hatを獲得することで、ソフトウェア面での強みを得るとともに、AWSとの関係も深いVMwareとも、OpenStackで対抗できる可能性がある。
発表のポイントは次のようなものだ。
- IBMはRed Hatの株式1株あたり190ドルをキャッシュで支払う。
- IBMの最高経営責任者(CEO)Ginni Rometty氏は、多くの企業では20%しかクラウド化が進んでおらず、「経費を節約するためにコンピューティング能力をレンタルしている」と述べている。残る80%が真のビジネス上の価値を解き放ち、成長を促すとして、ハイブリッドクラウドの可能性について話した。
- Red HatのCEO、Jim Whitehurst氏は、同社はIBMによる買収で規模のメリットを得られる一方、オープンソースに対するコミットメントは今まで通り維持されると述べている。
- Red HatとIBMの両方が、買収後の会社は「ハイブリッドマルチクラウドの普及」を加速すると述べている。
- Red HatはIBMのハイブリッドクラウド部門の独立した部門として今の形を維持し、IBMに対して成長とソフトウェアの売り上げ、クラウド事業を成長させるための手段を提供する。
- IBMは買収資金の調達に必要なキャッシュ、クレジットライン、ブリッジラインを十分に保有しており、投資格付けを維持するため規律を持って買収を進めるという。またIBMは、株式購入プログラムを一時停止する。