本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、電子情報技術産業協会の柵山正樹 会長と、UiPathの田邊智康 ディレクターの発言を紹介する。
「私たちにこれから求められるのは、さまざな産業と“共創”することである」
(電子情報技術産業協会 柵山正樹 会長)
電子情報技術産業協会(JEITA)が先頃、電子情報産業の世界生産見通しや注目分野の動向について記者会見を開いた。柵山氏の冒頭の発言はその会見で、JEITAがカバーするIT・エレクロニクス業界としての今後のありようを述べたものである。
電子情報技術産業協会の柵山正樹会長
柵山氏は会見で、JEITAについて「当協会は高度な情報利活用によって新たな価値を生み、社会全体の最適化をもたらす“Society 5.0”の実現、推進を事業方針として掲げており、電子デバイスやITソリューションサービスなどを中核として、あらゆる産業をつなぎ、業種業態を越えて社会課題に向き合う“課題解決型”の業界団体を目指している」と説明。これに続けて「重要なこと」と前置きして述べたのが、冒頭の発言である。
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは柵山氏が注目分野として取り上げた自動車の次世代技術「CASE」(Connected、Autonomous、Shared&Service、Electric)の動向にフォーカスしたい。
まず、車本体の進化はどうか。条件付き運転自動化を指す「レベル3」以上の自動運転車については年平均65.8%増加し、2030年には713万台の生産台数になると予測。また、環境対応車は年平均20.1%増加し、2030年には8872万台となり、特に電気自動車は2030年に2000万台を超え、車全体の15%を占めるようになるとの見通しだ。
これらの車の普及見通しに基づくと、その進化を支える電子制御装置(ECU)の市場規模は、2017年の9.5兆円から2030年には17.8兆円へと約2倍に拡大すると予測。特に環境対応系のECUは環境対応車の普及に伴い、年平均13.5%増加し、2030年には2017年の5.2倍へと成長する見込みだ。
また、CASEに必要となるデバイスは年平均10.8%増加し、2017年の3.5兆円から2030年には13.3兆円へと約4倍の世界生産額になると予測。特に成長が期待できるデバイスとして、情報収集を担うカメラモジュールの生産数量が2017年比で約5倍、省エネのカギとなるインバータの生産数量は同じく約6倍へと、いずれも2030年に向けて大きな成長が見込まれている。
こうした予測に対し、柵山氏は「自動車は機械分野のみならず、IT・エレクロニクス分野をも巻き込み、業界の垣根を越えた変革が動き出しており、この潮流はますます加速していくだろう」との見解を示した。
「CASE」の概要とそれぞれの領域の注目デバイス
それにしてもCASEとは、それぞれの技術領域をうまくピックアップした表現である。技術ではあるが、マーケティングの“造語”にもなりつつある。デジタル変革にはこうした旗印になるような表現が必要かもしれない。