IBMに買収されるまで、Red Hatは公開企業だったため、その財務状況についてはかなり詳細に明らかになっていた。ところが、Linux市場におけるRed Hatの最大のライバルであり、Ubuntuを生んだ企業であるCanonicalは非公開企業であるため、同社の利益や売上高について分かっていることははるかに少ない。ただし、Canonicalは新規株式公開(IPO)に向けた準備をしているため、十分に注意を払えば、同社の財務状況の手がかりを得ることができる。
Canonicalの本社は英国にある。すべての英国企業は、設立時に企業登記局に登記されているため、Canonicalがたとえ創業者のMark Shuttleworthが100%所有している非公開企業であっても、年次報告書の提出が義務づけられている。
このレポートは、米国で証券取引委員会(SEC)に提出されるものほど時機を得たものではない。例えば1月3日に提出されたCanonicalの最新の年次報告書の対象期間は、2018年3月31日を末日とする同社の2018会計年度だ。それでも、この報告書を見れば、同社のLinux企業およびクラウド企業としての人気はある程度分かる。
第1にCanonicalは、クラウド向けのLinuxとしてもっともよく利用されているにもかかわらず、Red Hatほどの売上高はない。Red Hatの2018年3月末締めの年間売上高は29億ドルで、純利益は2億5900万ドルだった。一方Canonicalは、総売上高は1億1000万ドル、純利益は620万ドルに過ぎない。
厄介なのは、2017年のCanonicalの売上高はもっと高かったということだ。具体的には1億2600万ドルだった。Canonicalの最高執行責任者(COO)Neil French氏は、売上高が減少した理由として、人員削減を挙げている。
それでも同社の税引き後利益は1110万ドルだ。これは2017年の損失880万ドルよりもはるかによい数字だと言える。
ただし、この売上高の数字を見て、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)の方がUbuntuよりも人気があると決めつけてはいけない。Cloud Marketが発表した、2019年1月8日時点のAmazon Web Services(AWS)で使用されているインスタンス数の統計では、UbuntuはほかのどのOSよりも多い31万4492インスタンスで、RHELは2万2072インスタンスだった。
では、なぜこれほど売上高が違うのだろうか。筆者がShuttleworth氏に尋ねた際に同氏が挙げた理由の1つは、「UbuntuがRHELよりもずっと安い」ことだった。もう1つの理由は、多くの企業Linuxユーザーが、サーバをサポート契約なしで使用していることだろう。
とは言えCanonicalの純利益は、2017年には200万ドルだったが、2018年には620万ドルと3倍以上になっている。この利益増には、Ubuntuのサポート契約の売上高の増加と、人件費削減の両方が貢献しているようだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。