マイクロソフトとDMG森精機、工作機械のデジタル化促進で協業

阿久津良和

2019-01-22 17:53

 日本マイクロソフトは1月22日、IoTの最新動向の紹介とビジネス変革を目的としたイベント「IoT in Action」を都内で開催した。IoT in Actionは米国サンタクララを皮切りに世界各国で催してきたグローバルイベントで、東京開催は2回目となる。

 Microsoftは2018年7月に、IoT分野へ4年間で5億ドル(約5300億円)の投資を表明し、IoT市場へ注力し続けている。日本マイクロソフトは今回、工作機械を中心とする制御システム向けIoTソリューションの提供でDMG森精機と協業することを併せて発表した。

 DMG森精機 専務執行役員の川島昭彦氏は、日本マイクロソフトと協業について「(工作機械の情報をサーバに集約し、保守状況などを可視化する)『DMG MORI Messenger』を自社サーバで運用してきたが、将来的な負担も大きく、セキュリティや規模感などから協業がベストな判断。2019年前半にMicrosoft Azureへ移行する」と説明。さらに「(協業に関する活動は)始まったばかりで、これからデータ収集が始まる。社会環境の変化に応じたサービスの提供を(日本マイクロソフトに)求めたい」と要望した。

新たな協業を発表した日本マイクロソフト 代表取締役社長の平野拓也氏(左)とDMG森精機 専務執行役員の川島昭彦氏
新たな協業を発表した日本マイクロソフト 代表取締役社長の平野拓也氏(左)とDMG森精機 専務執行役員の川島昭彦氏

 イベントでは、日本マイクロソフト 代表取締役社長の平野拓也氏が基調講演に登壇した。Microsoft 最高経営責任者(CEO)であるSatya Nadella氏が以前に語った「Tech Intensity(テックインテンシティ)」を取り上げ、「社会変革を実現するには、イノベーションの連鎖をうながす基盤が必要と感じている」(平野氏)と改めて強調した。既に非IT系企業でも業務でテクノロジを用いることが一般的になり、テクノロジを背景にした業務変革や企業変革が求められている。その上で平野氏は、「ポジティブな変革の連鎖を起こすには2つの要素が必要」だと語った。

 1つは、「最新のインダストリー(産業)を牽引するテクノロジを素早く組織に取り込めるか」で、もう1つは「産業基盤を企業内に構築して独自のスキルや人材資源を育て上げることが可能な組織を目指せるか」だという。平野氏は、この2つがなければTech Intensityは成立しないとし、そのためには経営層の視点を変化させ、企業内に文化を育成するTech Intensity的視点を持つことにより、他企業との差別化や自社変革が進むと解説している。

 イベントのテーマであるIoTに関して、既に国内でも多数の事例が存在する。日本マイクロソフトは18日、北菱電興が開発したIoT活用除雪車運行システム「スノプロアイ」が石川県加賀市に採用されたことを発表した。同ソリューションは、Azure IoT HubやAzure Functionsを活用し、監視員はもちろん受託業者用の稼働状況や報告を可視化する。2018年12月に本格導入され、今冬の降雪除去にも活躍しているという。

 北菱電興担当者は、「季節によって変動する積雪量によってサーバの負荷耐久度がネックとなっていたが、Microsoft Azureに移行することでスケーラビリティの問題を解決した」と語る。同社によれば、加賀市以外の自治体への展開も予定しているという。この他にも豊田自動織機、日本アンテナ、近畿大学水産研究所、東京電力パワーグリッド、ブリヂストン、久野金属工業といった多数の導入事例がある。

 日本マイクロソフトとDMG森精機の協業では、その背景に2016年9月に発表した「工作機械を中心とする制御システムのセキュリティ、スマートファクトリーの実現に向けた技術協力」がある。両社によるセキュリティやクラウドといった技術活用の結果を踏まえ、工作機械をデジタル化することで長期にわたる工作機械のライフサイクルと、目まぐるしく変化する現状に対応するためのソリューション「CELOS Club」に至った。

 DMG森精機は、工作機械に設置した各種センサから取得するデータをMicrosoft Azure上に蓄積し、コンタミネーションコントロール(製品に混入した不純物を取り除く)やフィルタ交換検知、トレーサビリティなどに用いる。また“インダストリー4.0”の文脈では、「工場内の工作機械を一元的につなげるのは半分程度だが、複数の工場の接続や類似した工場同士を接続する時代が目前に来ている。半導体や5Gといった要素技術が一つひとつ進化することで、その上で形成される物事が劇的に変化するのは歴史を紐解けば明らか」(川島氏)として、IoTビジネスの推進を表明した。

 今回の協業でDMG森精機側にはデジタル化によるビジネスモデルの変革、日本マイクロソフト側には「インダストリーイノベーション」として注力する分野の1つとして製造業に対する知見の蓄積と事業拡大といった狙いが見えてくる。

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