日本MSとDMG森精機、2017年のスマートファクトリー実現に向けて協業

取材・文:阿久津良和 構成:羽野三千世

2016-09-12 13:52


DMG森精機 取締役社長 森雅彦氏(左)、日本マイクロソフト 執行役員会長 樋口泰行氏(右)

 IoT、Industrie 4.0に注目が集まる中、日本マイクロソフトとDMG森精機は9月9日、工作機械を中心とする制御システムのセキュリティ強化や、スマートファクトリー(あらゆる機器をIoT化し、各種情報を可視化して人と機械が有機的に活動する工場もしくは施設)の実現に向けた企業連携と技術協力を行うことを発表した。クラウドやセキュリティ技術を活用し、2017年までに既存工作機械の稼働率と生産性を高めるソリューションを発表する予定だ。

 工作機械の販売・保守などを行うDMG森精機だが、同社取締役社長 森雅彦氏は、顧客の関心がここ数年で変化していると話す。5年前は工作機械のスペックが関心の中心だったが、2年前からは設備投資保証や品質、価格といった全体的なソリューションへ変化しているという。この状況に対応するため同社は、約300種類あった製品種目を約半分に減らし、ソフトウェアや自動化など、ソリューションとしての価値を高める方向へシフトしている。今回の協業もその一環だ。

 具体的には、MicrosoftがWindowsで培った技術を使ってDMG森精機の工作機械コンソール「CELOS」のセキュリティを強化。センサから取得した情報をクラウドへ集約するための安全なネットワーク網を構築し、さらにクラウド上でのデータ管理を強化していくとする。クラウド上に集約したデータは、予防保全を始めとする事前対策的な活用と、新たなビジネスモデルを構築の検討のために活用する。

 DMG森精機では、機械の稼働状態を監視するシステムは10年前に構築済みだが、工場を世界各国に設置し、海の向こうから状況を確認したいといった需要に応えるため、Microsoft Azureのネットワーク網を利用する。同社は国内を中心に1万台前後のデバイスを遠隔管理しており、工場内ネットワークに接続する事例が増えているため、セキュリティ強化が急務だという。また、同社が工場などに納品した工作機械の年代別割合は約半分が1980~90年代。工作の現場で古い機械が稼働しているケースは珍しくないが、これらの予防保全や部品配送などは喫緊の課題だという。

 この問題を改善するためのソリューションを日本マイクロソフトと共に、2017年を目標に共同開発する。さらに、また、機械操作員の安全性を高めるデータ活用や、VR(仮想現実)、ウェアラブルデバイスなどを活用した作業効率の向上についても連携して取り組むとした。

 DMG森精機 取締役社長 森雅彦氏は、日本マイクロソフトをパートナーに選んだ理由として、「(われわれの業界では褒め言葉に当たる)ITの老舗だから。グローバルに活動しながら、消費者から企業まで幅広い分野に長けている」と述べた。

 Microsoftは、IoT分野に特化して迅速なソリューション展開を可能にする「Azure IoT Suite」を提供し、遠隔監視や予兆保全、資産管理などを事前定義済みソリューションとして用意しているが、「今後も各種シナリオに沿ったソリューションを増やしていく」(日本マイクロソフト 執行役員会長 樋口泰行氏)と表明した。


日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 榊原彰氏

 また、AzureとIoTデバイスの接続を保証する「Microsoft Azure Certified for IoT」に関して、「既に100以上のIoTデバイスが認定デバイスとして登録済み」(樋口氏)と説明。今後も対応デバイスの増加に努めるという。セキュリティ分野に対しても、樋口氏は、「年間1000億円を投資し、セキュリティ強化を最重要課題としている。セキュリティには一切妥協しないという精神」とアピールした。

 今後の具体的な展開は来年の発表を待たなければ見えてこないが、DMG森精機はIoT時代に則したビジネスモデルの転換を目指し、日本マイクロソフトは「デバイスから得たデータの解析・洞察に関して技術協力を進める」(日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 榊原彰氏)との説明どおり、IoT時代を見据えたクラウドビジネスの拡大を目指している。

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