一般社団法人「日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)」は1月28日、東京・内幸町の帝国ホテルで2019年度の新年賀詞交歓会を開催した。約200社から業界関係者など約660人が参加した。
開会のあいさつで会長の大塚裕司氏(=大塚商会社長)は、次期会長として副会長の林宗治氏(=ソフトクリエイトホールディングス社長)を選出することを公表。当初の予定にはなかったが、林次期会長を壇上に招いて参加者に紹介し、「JCSSAの会長になって13年が経過した。任期途中ではあるが、6月の総会で林副会長に会長職を譲ることになる。世代交代をしたいと考えている。世代交代をしても、ITは進化をして、JCSSAとともに日本を元気にするというコンセプトでがんばっていくことは変わらない」と語った。

あいさつするJCSSAの大塚裕司会長(右)と次期会長として紹介された林宗治副会長
一方で大塚氏は、今回の賀詞交歓会の参加者数が過去最高となったことに触れ、「皆さんを迎えるのに、15分間頭を下げ続けて、少し腰にきた」とショークを飛ばしながら、「多くの人たちに支えられてここまでくることができた」と述べた。
さらに、「2019年は新元号、消費増税があり、この業界にはやることが山のようにある。働き方改革も4月には法制化が動き出す。生産性を上げて、コストを下げ、日本の人口が減っても、競争力を下げないのが働き方改革である」とコメント。大塚商会では、1998年に現在の社内システムの基礎を導入したといい、当時の売上高は3117億円だったが、昨年度の売上高見通しは約7200億円になるとした上で、社員数は7%増にとどまると説明した。
大塚氏は、「わずかこれだけの人員増で2倍以上の売上増になっているのは、ITの成果によるもの。中小企業のIT化はまだこれから。大塚商会は毎月28万社と取引をしているが、ここ3カ月はコピー用紙の売れ行きでは1日当たりの出荷トン数が増加し、1口座あたりの売上額も堅調に増加している。市場はそんなに悪くない。こういう環境だからこそ、投資をして、ソリューションによって、人手不足の解消と生産性を向上させる年にしたい。そのためには、販売店協会の会員企業の顧客にどれだけメリットを与えられるかが重要になる」と語った。
来賓としてあいさつした経済産業省 商務情報政策局情報産業課長の菊川人吾氏は、「さまざまな業界団体の賀詞交歓会であいさつをしたが、一番元気がいい業界であり、笑顔が多い」と述べた。

経済産業省 商務情報政策局情報産業課長の菊川人吾氏
2019年は、改元、働き方改革、外国人人材の登用、消費増税の動き、キャッシュレスの問題も始まるとした上で、さらに「昨年は災害が多かったが、東京オリンピック/パラリンピックの1年前ということもあり、国土強靱化がテーマになる。ここではハード面だけでなく、ソフトウェア面、サービス面でも強靱化することが必要になり、セキュリティの強化も課題になるだろう。米中貿易問題など難しい課題もあり、エマーシングテクノロジにも対応し、足下を救われないようにするために情報を共有していきたい」と話した。
また、「今年は多くのイベントがある。ビジネスのチャンスにつなげる一方で、リスクをしっかりと把握をしてほしい」と呼び掛け、「日本には380万社の中小企業や個人事業主がいる。そのうちの6~7割の企業では社長の平均年齢が67歳であり、70歳といわれる世代交代の時代がこの3年でやってくる。多くの中小企業で世代交代が始まる。税制も抜本的強化をしていく。皆さんには、若い人たちが経営者になった時に、生産性向上を進める手助けをしてほしい。政府は成長の邪魔はしない。日本の経済がしっかりと繁栄するようにしていきたい」と述べた。
続いて祝辞を述べたのは、レノボ・ジャパン社長のデビット・ベネット氏。実は大塚氏のあいさつの際に、来賓紹介で間違って登壇してしまい、舞台上を後ずさりして降壇するというパフォーマンスを演じた。会場から大きな笑いが起こった後で、本人も苦笑しながら再登壇する形になった。ベネット氏は、はにかみながら「すみません」と小声で話ながら、英語で元気に「Happy New Year!」と呼びかけ、「せっかくなので、日本語でがんばりたい」と、全て日本語であいさつした。

来賓の祝辞を述べるレノボ・ジャパンのデビット・ベネット社長
「10年ぶりに日本に住み、皆さんと一緒にこの市場を活性することができて、エキサイティングである。世界のPC市場を見ると、ようやく日本がリードしてきたプレミアムで高品質のPCが注目を集めてきた。日本と同じような要求が世界中から出てきている。一方で、これからは海外で標準化されたものが日本に入ってくることになるだろう。レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータが日本の架け橋になって、新たな製品やサービスを持ってくるだけでなく、日本から新たな製品やサービスを世界に展開していきたい。日本と世界のPC市場を活性化したい。Win Togetherがキーワードである」などと語った。
乾杯の音頭を取った一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の荻原紀男会長は、「昨年はIT補助金が100億円から500億円に増額されたが、上限額が100万円となってしまったため、消化率は60%に達していない。本来なら使い切れなかったとして今年度は予算がなくなるが、経済産業省や中小企業庁が“忖度”(そんたく)をしてくれ、100億円の予算が計上され上限額は900万円にまで増えた。さらに、モノづくり補助金では、ハードウェア、ソフトウェア、クラウドの費用に加えて、導入コンサルタント費用も含めて1000億円の予算が計上されている。これを合わせると1100億円を使えることができる。私たちも、モノづくりに励んでいきたい」とした。

乾杯の音頭を取る一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の荻原紀男会長
また次期会長として紹介された林氏が中締めを行い、そのあいさつの中で、「協会の歴史を振り返ると、発足時には日本のPC販売にルールがない中で始まった。その発起人の一人が、私の実父であるソフトクリエイト会長の林勝である。今回の会長就任は宿命だと感じている。私は、これからの日本のクラウド販売はどうなるのかといったことに危機感を持っている。10年後には仕事がなくなっているかもしれない。その中で販売店がどう生き残るのかが今の大きな課題だと考えている。委員会活動に参加してもらえる企業を募集している。また、今後10年に渡って取り組む課題を一緒に見つけてほしい。気がついたことは提案してほしい。具体的な方針は、2019年6月の総会後の懇親会で話をしたい」と語った。