コーヒーはIoTと自動化でどこまで変われるか--新形態のコーヒーショップを訪ねて

Mary Branscombe (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2019-02-18 06:30

 Roasting Plantの創業者Mike Caswell氏はもともとStarbucksで働いていた。当時の仕事は、McDonald'sやDunkin' Donutsのようなファストフードチェーンと競争しているStarbucksのために効率化を図ることだった。その後同氏は、自分で自動コーヒー豆焙煎システムを開発して、客の目の前で焙煎した豆からコーヒーを淹れるコーヒーショップを作ろうと決めたが(ロンドンではRoasting Plantの新店舗が開店したばかりだ)、それはオートメーションを賢く使って美味しいコーヒーを淹れるためだった。

 Roasting Plantの店舗で行われているコーヒー豆の焙煎には、劇場的な要素がある。これは、シリコンバレーにあるアイスクリーム屋Smittenが、液体窒素を供給するタンクやパイプを意図的に客に見せているのと同種のものだ。このアイスクリーム屋では、オーダーが入ってから、客の目の前で液体窒素を使って材料を撹拌して凍らせたアイスクリームを提供している。Roasting Plantの店舗に入ると、映画「チャーリーとチョコレート工場」を思い浮かべる人も多いだろう。店舗では、透明のシリンダーに入った薄緑色の生豆が真空のチューブを通ってコーヒー焙煎機「Javabot」に投入され、はじけるポップコーンのように空中に巻き上げられながら焙煎されているところが見られる(焙煎には、豆の種類、気温、湿度に応じて8分から15分かかる)。

 豆の色が灰色がかった緑から青白くなり、さらに焦げ茶色へと変わっていくにつれて、大きさは2倍になり、表皮は剥がれ飛んで吸い出され、豆殻を溜めておくシリンダーに芸術的な彩りで積み上がる(この豆殻は近隣の庭園で堆肥になる)。

 焙煎された豆は下に落ち、取り込まれた外気で冷却された後、吸い出されてそれぞれの保存シリンダーに音を立てながら一定のスピードで落ちていく。ただし、豆が割れると酸化が速く進んでしまうため、落ちる速度は緩めに調整されている。豆は、条件によって12時間から7日間の間、客の目の前にディスプレイされる。この期限は、焙煎された豆自体から放出される二酸化炭素によって豆を保護し、新鮮な状態を保てる時間によって決まる。二酸化炭素は空気よりも重いため、シリンダーに保管されているコーヒー豆の上を覆い、空気に触れて酸化するのを防ぐ。

 自動化システムは、空気や焙煎機をコントロールしたり、コーヒー豆保存シリンダーやコーヒーメーカーのコントローラーと通信するだけでなく、どの豆にどれだけの在庫があり、どんな飲み物が注文されたかを追跡している作業スケジュールデータベースも管理している。システムは、スタッフが必要な生豆を袋から供給し続ける限り、需要に応じていつどの豆を焙煎すべきかを自動的に決定できる。

 カウンターで飲み物を注文すると、ひとつかみのコーヒー豆が保存シリンダーの底から吸い出され、重さと体積が計測され、密度が計算される。店舗で客の目から見えないプロセスはその部分だけだ。Caswell氏によれば、その詳細は競争上の秘密で、競合他社が店に来て見ているだけでは分からないようになっており、このステップでそれぞれのコーヒー豆の状態を調べて調整することで、レシピを改善しているのだという。

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