ガートナー ジャパンは、3月12~13日に「エンタプライズ・アプリケーション戦略 & アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2019」を都内で開催した。13日のユーザー事例特別講演には、ゼンショーホールディングス 執行役員 グループIT技術本部長の野々下信也氏が登壇し、同社が12年にわたって取り組んできたシステム改革の軌跡について語った。
ゼンショーは、「すき家」や「なか卯」などの外食産業を中心に手がける。外食産業における売上高は、2000年3月期で国内87位(174億円)だったが、2018年3月期には1位(5791億円)となり、18年間で33倍に成長した。世界でも5位(1位はマクドナルド)に付けているという。
同社の成長の背景には、ITシステムの改革がある。野々下氏が改革に着手した2007年時点では、店舗ごとにITシステムがバラバラだった。Excelシートを配布しても、現場の判断で独自に計算式を変えたり、項目を増やしたりしていた。個人事業主が1人で作った物流システムが30カ所の物流センターで稼働していた。
自社開発で店舗システムを統合、売上はAWSに集約
ゼンショーホールディングス 執行役員グループIT技術本部長の野々下信也氏
ITシステムを変革すべく2007年に野々下氏が打ち立てたIT戦略の骨子は、コア事業(サプライチェーン管理、生産管理、店舗システム)を自社開発で再構築し、システムを統合すること。一方、ワークシェアリング(人事給与、会計、ワークフロー)については、パッケージを採用して短期導入を図った。内部統制にも取り組んだ。
2007年から約12年を要して2018年時点では、それまでバラバラだったシステムの多くを統合した。ただし「なか卯」については、他の事業とは異なり、POS(販売時点情報管理)を導入しなかった。従業員教育がやり直しにならないよう券売機によるオペレーションを続投した。
会計システムは、ICSパートナーズの会計ソフトウェアに統合した。人事・給与システムは、ワークスアプリケーションズの「Company」に統合した。会計システムについては、海外を中心に順次SAP S/4HANAに切り替えていく方針だ。まずは2019年1月に、中国法人でSAP S/4HANAを導入している。
売上管理システムの刷新は後回しになっていたが、2017年にデータ標準化委員会を立ち上げた。この委員会では、マスターや係数データの標準化などに取り組んだ。現在では、それぞれの店舗の売上データをクラウド(Amazon Redshift)に集約し、これをビジネスインテリジェンス(BI)で分析できるようになっている。