本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は趣向を変えて、一般社団法人日本損害保険協会がまとめた調査レポート「サイバー保険に関する調査2018」の内容が非常に興味深いので取り上げたい。
サイバーセキュリティ対策、中小企業ほど「わからない」
日本損害保険協会が先頃、サイバーセキュリティやサイバー保険に関するアンケート調査を実施し、国内企業1113社から回答を得てまとめた調査レポート「サイバー保険に関する調査2018」を発表した。
「調査概要」「日本企業のサイバーリスクへの対応状況」「サイバー保険の加入状況」「サイバー保険加入促進策の検討」といった章立てで全68ページからなる調査レポートは、同協会のサイトから閲覧できる(PDF)。本稿ではその中から5つの調査結果を取り上げる。
1つ目は、サイバーセキュリティ対応の充足度に対する認識について。結果は図1のように、企業全体では、「十分である」との回答はわずか5.2%となっている。
図1:サイバーセキュリティへの対応状況(出典:日本損害保険協会)
傾向としては、売上規模が小さくなるにつれて、自社のサイバーセキュリティ対策について「十分である」「不十分である」ではなく、「わからない」と回答する割合が高まっており、充足度について認識していない傾向がある。
2つ目は、自社がサイバー攻撃の対象になる可能性について。企業全体では、「可能性がある」との回答が38.9%、「可能性がない」は5.7%、「わからない」は54.9%となっており、60%以上の企業が、自社がサイバー攻撃の対象になる可能性があることを認識していない。
従業員数別でみると、1000人以上の企業では、「可能性がある」との回答が79%に対して、50人未満の企業では25.1%にとどまり、企業規模が小さいほど、サイバー攻撃への危機意識が低い傾向がある。
3つ目は、サイバーセキュリティの事故経験について。結果は図2のように、企業全体では、「ある」との回答が14.1%、「ない」が74.4%となっている。
図2:サイバーセキュリティの事故経験(出典:日本損害保険協会)
この結果から、売上高や従業員数、個人情報の保有数が多い企業ほど、事故経験がある割合は高くなる傾向があるが、規模が小さい企業でも事故経験があり、規模を問わずサイバー攻撃を受ける可能性はある。