2019年の「攻めのIT経営銘柄」と「IT経営注目企業」が発表--最優秀はANA

大河原克行 2019年04月24日 06時00分

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 経済産業省と東京証券取引所は4月23日、「攻めのIT経営銘柄2019」および「IT経営注目企業2019」を発表し、東京・内幸町のイイノホール&カンファレンスセンターで表彰イベントを行った。新たに攻めのIT経営銘柄の中からデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する取り組みが高く評価された企業を最優秀企業「DXグランプリ 2019」として選出し、ANAホールディングスが選ばれた。

「攻めのIT経営銘柄2019」の受賞企業の関係者
「攻めのIT経営銘柄2019」の受賞企業の関係者

 今回の「攻めのIT経営銘柄」に選ばれたのは、積水ハウス、アサヒグループホールディングス、帝人、ユニ・チャーム、エーザイ、JXTGホールディングス、プリヂストン、JFEホールディングス、小松製作所、日立製作所、富士通、凸版印刷、大日本印刷、関西電力、東日本旅客鉄道、ANAホールディングス、ヤフー、伊藤忠テクノソリューションズ、三井物産、日本瓦斯、丸井グループ、三井住友フィナンシャルグループ、大和証券グループ本社、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、東京センチュリー、三井不動産、三菱地所、パソナグループ、ディー・エヌ・エーの29社。

「IT経営注目企業2019」の受賞企業の関係者
「IT経営注目企業2019」の受賞企業の関係者

 また「IT経営注目企業」として、日揮、住友化学、三菱ケミカルホールディングス、花王、コニカミノルタ、沖電気工業、中部電力、SGホールディングス、テクマトリックス、パイプドHD、ラクスル、メルカリ、SCSK、Hamee、パルコ、ふくおかフィナンシャルグループ、SOMPOホールディングス、イオンフィナンシャルサービス、ルネサンス、ERIホールディングスの20社が選ばれた。

 攻めのIT経営委員会の委員長を務めた一橋大学CFO教育研究センター長 同大学大学院商学研究科特任教授の伊藤邦雄氏は、DXグランプリ 2019に選出したANAホールディングスについて、「全社イノベーションへの取り組みが本格的であり、画期的であった。その実効性を高く評価した」とコメント。同社の空港における簡単、便利でストレスフリーな顧客体験価値の提供、人と技術の融合や、役割分担の見直しによる空港オペレーションの革新的な生産性向上といった成果のほか、米PRIZE財団がANA Avatarレースを採択し、ANA AVATAR VISIONなどの未来志向で面白い試みが多く、これらの取り組みが、同社の競争優位性につながるものである点などを評価した。

伊藤委員長から、DXグランプリの楯を受け取る全日空の平子社長(右)
伊藤委員長から、DXグランプリの楯を受け取る全日空の平子社長(右)

 ANAホールディングス 取締役兼全日本空輸 社長の平子裕志氏は、「ANAは、現在260機以上を所有し、一日1000便、15万人を運んでいる。機内や空港カウンター、コールセンターといったお客さまとの接点では、ヒントになる助言やお叱りをもらう。お客さまの声を聞く専門部署では、一日に100件の声をもらう。これらを分析することで、そこから、次のイノベーションの種、アイデアの種、改善の種が生まれる。これが空港現場での簡単、便利を実現するヒントになってきた」と述べた。

 また、現在ANAが提供するアバターでは、人間の五感のうち「見る」「聞く」「触る」という三感を使って「時空を超えた移動ができるようになっているが、四感目、五感目を使った、もっと高度なアバターができないかと考えている」(平子氏)といい、「来年(2020年)は東京五輪が開催されることもあり、キーワードはユニバーサルになるだろう。日本がどこまでユニバーサルになれるかが鍵になる。そのためには、オープンイノベーションによる『Society5.0』の実現が不可欠。5月から令和の時代が始まる。美しい調和を含んだデジタルトランスフォーメーションによって、超スマート社会の実現に貢献したい」とコメントしている。

 攻めのIT経営銘柄では、東京証券取引所の上場企業(東証一部、二部、マザーズ、JASDAQ)約3600社の中から、優れた「攻めのIT経営」を実践している企業を、33の業種区分ごとに選定する。従来の社内業務効率化や利便性の向上を目的とした「守り」のIT投資にとどまることなく、企業価値向上や競争力強化に結びつく戦略的な「攻め」のIT投資を行っている企業を公表することで、中長期的な企業価値向上を重視する投資家にとって、これらを魅力がある企業として紹介する狙いがある。

 2015年に開始され、これまでのべ107社が選ばれている。選定方法は、上場会社を対象に、「攻めのIT経営に関するアンケート調査」を配布。回答があった企業をスコアリングして評価。攻めのIT経営委員会による最終選考を通じて決定した。さらに、攻めのIT経営銘柄の選考では、総合評価点上位10%程度に入り、レガシーシステムの刷新やIT-IR、IT人材育成、ITに関するR&Dといった「攻めのIT経営」を推進する上で、重要なテーマについて注目される取り組みを行っている企業を「IT経営注目企業」として選定している。

 経済産業 副大臣の磯崎仁彦氏は、「デジタル技術の革新は、従来にないスピードとインパクトで進展している。経済産業省は2018年、有識者による研究会で、日本企業におけるデジタル化の現状と課題について議論し、9月にDXレポートを取りまとめ、12月にはDXの障壁となるレガシーシステムの問題を解決するために、DX推進ガイドラインを策定した」と紹介した。

経済産業 副大臣の磯崎仁彦氏
経済産業 副大臣の磯崎仁彦氏

 今回の攻めのIT経営銘柄の選定に当たって、「DX推進ガイドラインに基づき、経営者の強いコミットメントのもと、DXを推進している企業を高く評価した。また、デジタル時代を先導する企業を、DXグランプリに選定した。今回、選定された企業の中には、顧客情報の一元化によって、顧客満足度の向上につなげた企業や、多様な働き方に対応した環境整備や、デジタル化が進んでいない業務の効率化を推進し、生産性を向上させた企業もある。攻めのIT経営のベストプラクティスが広く知れ渡り、これが多くの企業な浸透することを期待している」と述べた。

 東京証券取引所 執行役員の川井洋毅氏は、「企業経営でITは欠かせないものになっているが、現状にとどまらず、ITを活用して生産性向上やビジネスの変革を実現する『攻めのIT経営』が、資本市場の活力ある成長を持続させるために必要不可欠になる」とし、資本市場のさらなる活性化のために攻めのIT経営に取り組む上場企業を取り上げ、好事例として、紹介することが選定の主旨だとした。また、「今回は最優秀賞という形でDXグランプリを選定した。DXによって、ITを用いて企業風土やビジネスモデルを変革させることができる。そして、世界の大きな企業と競争できる生産性の高い企業が幾つも誕生し、日本の資本市場が世界の投資家から選ばれる市場になることを狙っている。攻めのIT経営銘柄に選定された企業には、日本経済を成長する役割を担ってほしい」と呼び掛けた。

東京証券取引所 執行役員の川井洋毅氏
東京証券取引所 執行役員の川井洋毅氏

 経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課長の中野剛志氏は、「DXを進める上で課題となっているのは、IT関連費用の80%が現行システムの維持管理に使われているという点だ」と指摘し、「短期的な観点でシステム改修を繰り返した結果、長期的に保守、運用費が高騰する『技術的負債』が生まれている。これを返済することができず、戦略的なIT投資に資金、人材を振り向けられていない」と話した。

 レガシーシステムを刷新しなければ「攻めにいけない」というのが実態で、「何かやろうとしても、足がもつれる。今回の選定では、レガシーシステムの刷新に取り組んでいる企業を高く評価している。新たなシステムによって経営が変わり、アイデアが生まれ、どんどん攻めていけるようになる」と述べている。

 最後に伊藤氏は、「選定された企業は、ROE(自己資本利益率)やキャッシュフローが改善している。また、経営トップが企業価値向上のためのIT活用の推進に注力し、特にDXに力を注いでいることが分かった」と総評。さらに、「選定された企業は、データとデジタル技術を活用した新たな挑戦に取り組んでおり、攻めのIT経営を推進するための体制を確保しているといった特徴がある」などとした。

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