本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、IIJの勝栄二郎 代表取締役社長と、米ThousandEyesのAlex Henthorn-Iwane 製品マーケティング担当バイスプレジデントの発言を紹介する。
「クラウドサービスは当社のコア事業として今後も注力していきたい」
(IIJ 勝栄二郎 代表取締役社長)
IIJの勝栄二郎 代表取締役社長
インターネットイニシアティブ(IIJ)が先ごろ、2018年度(2019年3月期)の決算を発表した。勝氏の冒頭の発言は、その発表会見の質疑応答で、クラウド事業の最近の状況について聞いた筆者の質問に答えたものである。
IIJの2018年度の連結業績は、売上高が前年度比9.2%増の1923億3000万円、営業利益は同8.2%減となった。中でも売上高の83.3%を占めるストックビジネスが同9.7%増と積み上がり、強固な財務基盤を築いている。
同社のストックビジネスは、創業以来のインターネット接続サービスが中心だが、ここ数年はクラウド事業などにも注力。同事業の2018年度の売上高は201億円で、前年度比12.2%増を記録。現状では同年度の全売上高に占める割合は1割超といったところだが、同社では成長事業の1つと位置付けている。
同社のクラウド事業の主力サービスは、2015年11月に提供を開始した「IIJ GIOインフラストラクチャーP2(IIJ GIO P2)」。これは、パブリッククラウドとプライベートクラウドのメリットを融合させた形の「ホステッドプライベートクラウドサービス」である。
同社のクラウド事業に関する実績を表すキーになる数字や動きについては、図の下段に示されている。ちなみに、その左側の「4Q18売上の主内訳」に記された「プライベート」はIIJ GIO P2のことである。また、右側には顧客数の推移や顧客の月額規模別の社数まで記されている。自社のクラウド事業の状況についてここまで公開しているのは同社だけだろう。
図:下段に記されているクラウド事業の実績
こうした実績を踏まえ、筆者は会見の質疑応答で、クラウド事業の最近の動向と今後の展開について聞いてみた。すると、勝氏は次のように答えた。
「当社はクラウドをインターネットの延長線にある事業と考えている。その意味では、クラウドは当社にとってコア事業の1つだ。国内でクラウドをサービスとして提供しているベンダーは外資系大手が目立っているが、当社もその1社として存在感を高めていきたい。また、今後マルチクラウドが求められるようになれば、連携や統合管理、セキュリティーといった当社の技術が重宝されるようになり、優位性を発揮できると確信している」
冒頭の発言は、このコメントの最初の部分を取り上げたものである。筆者の記憶では、勝氏がクラウド事業を「コア事業」と表現したのは初めてのことだ。2019年度(2020年3月期)のクラウド事業の売上高は、前年度比11.9%増の225億円規模を計画。コア事業としての今後の展開に注目しておきたい。