VMwareやマイクロソフトとの関係、今後のハードウェア--Dell EMCが説明

渡邉利和

2019-05-23 10:36

 デルとEMCジャパン(Dell Technologies)は5月21日、4月29日から5月1日まで米国ラスベガスで開催した「Dell Technologies World 2019」での発表内容に関する国内向けの説明会を行った。既報の通り、デルテクノロジーズのクラウド戦略が明らかになったことで注目された。

Dell Technologies 日本最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏
Dell Technologies 日本最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏

 Dell Technologies 日本最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏は、今回を含む過去4回の同イベント(前半2回は「Dell EMC World」)のテーマについて言及した。2016年の「Let the transformation begin.」から2017年は「Realize」、2018年は「Make it Real」になり、今回は「REAL TRANSFORMATION」と変化し、黒田氏は「『やりましょう』から『もう進んでますよね』になった」と語った。

この4年間での「Dell EMC/Dell Technologies World」のテーマの変遷。並べてみると、確かに北米ではこの4年でほぼデジタルトランスフォーメーションが現実化した状況がよく分かる(出典:Dell Technologies)
この4年間での「Dell EMC/Dell Technologies World」のテーマの変遷。並べてみると、確かに北米ではこの4年でほぼデジタルトランスフォーメーションが現実化した状況がよく分かる(出典:Dell Technologies)

 その上で、2019年のイベントのハイライトとして、「人類の進歩・課題解決とデジタル技術」「Dell Technologies Cloudの発表」「製品機能拡張・強化への取り組み」の3点を挙げた。

 「人類の進歩・課題解決」に関しては、衛星画像の解析技術の高度化による自然災害への対応、汚染物質の影響範囲の推定などが実現といった話題や、医療分野では四肢に障害のある子供たちに、個々人に合った義手/義足などの介助具を3Dプリンターで安価に作成できるようになったといったことを紹介。現実世界のさまざまな課題や困難を解決する手段として、デジタル技術が広範に活用される状況になりつつあるとした。デジタル技術の恩恵は、合理化/効率化や企業利益の増大といった話にとどまらず、全人類/地球規模の幸福につながるものだ――という認識だ。

 クラウドに関しては、イベントでの発表の場にMicrosoft CEO(最高経営責任者)のSatya Nadella氏がサプライズで登壇し、良好なパートナーシップを維持していくことが強調された。同社のクラウド戦略は、基本的にはVMwareのクラウドソリューションである「VMware Cloud Foundation」をベースに展開され、まずはMicrosoft Azure上で「VMware Cloud Foundation」が提供される(「Azure VMware Solution」としてMicrosoftが販売)。

 また、同社が提供する「Dell Technologies Cloud」のポートフォリオには、「Dell Technologies Cloudプラットフォーム」と「VMware Cloud on Dell EMC」の2つのソリューションが含まれる。Dell Technologies Cloudプラットフォームは、シンプルにいえば、オンプレミス向けのプライベートクラウド環境のパッケージ」になるだろう。現時点で提供されているのは、同社のハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)製品「VxRail」に、VMware Cloud Foundationをプリインストールしたもので、今後HCI製品でも同様の構成の製品を提供することを計画している。検証済み構成となる「Ready Stack」も近日中に提供を開始する予定だという。

Dell Technologies Cloudの現時点での2つのポートフォリオ。いずれもオンプレミス環境で運用されるハードウェア製品をベースとしたもの。パブリッククラウドサービスについては、従来通り「VMware Cloud on AWS」や「Azure VMware Solution」という形でパートナーから提供され、同社はテクノロジープロバイダーとしての役割に徹するという方針が維持されているように見える(出典:Dell Technologies)
Dell Technologies Cloudの現時点での2つのポートフォリオ。いずれもオンプレミス環境で運用されるハードウェア製品をベースとしたもの。パブリッククラウドサービスについては、従来通り「VMware Cloud on AWS」や「Azure VMware Solution」という形でパートナーから提供され、同社はテクノロジープロバイダーとしての役割に徹するという方針が維持されているように見える(出典:Dell Technologies)
Dell Technologies Cloudの一方である「クラウドプラットフォーム」。現時点では既存のHCI製品であるVxRAILに、VMware Cloud Foundationがプリインストールされる形とも言える(出典:Dell Technologies)
Dell Technologies Cloudの一方である「クラウドプラットフォーム」。現時点では既存のHCI製品であるVxRAILに、VMware Cloud Foundationがプリインストールされる形とも言える(出典:Dell Technologies)

 一方の「VMware Cloud on Dell EMC」は、「Dell Technologies Cloudプラットフォーム」をData Center-as-a-Serviceモデルでオンプレミス向けに提供するものとなる。現時点で利用可能なVMware Cloud FoundationをプリインストールしたVxRAILをユーザーが指定する場所に設置し、運用管理を同社が担当することで、ユーザーは同製品を完全なマネージドサービスとして利用する形だ。

 いずれも、一般向けのパブリッククラウドサービスを同社が開始するものではなく、基本的にはオンプレミス環境向けにハードウェアを提供する形が維持されていると見ることもできるだろう。なお、黒田氏はDell EMCの製品がVMwareのクラウドソリューションに完全対応していくという方針も明かした。具体例としては、「現在はクラウドからはオンプレミスの物理的なストレージは“見えない”が、今後はこれを見えるようにしていく」としている。基本的には、今後の同社の製品は全てVMware対応になっていくと理解してよさそうだ。

Dell Technologies Cloudのもう1つのポートフォリオとなる「VMware Cloud on Dell EMC」の概要。ユーザー企業の視点からは、クラウドプラットフォームを自社データセンターに設置してもらい、運用管理もお任せで単に利用するだけ――というサービスとなる。国内での提供開始時期は未定(出典:Dell Technologies)
Dell Technologies Cloudのもう1つのポートフォリオとなる「VMware Cloud on Dell EMC」の概要。ユーザー企業の視点からは、クラウドプラットフォームを自社データセンターに設置してもらい、運用管理もお任せで単に利用するだけ――というサービスとなる。国内での提供開始時期は未定(出典:Dell Technologies)

 最後のポイントの製品機能拡張・強化に関しては、「今後もハードウェア製品の進化への注力を継続する」という宣言となった。IT業界全体がクラウドへと急速にシフトしている状況だが、クラウドを支えているのはハードウェアであることは変わらない。黒田氏は、Michael Dell氏(Dell Technologies Chairman & CEO)の「2兆ドルを扱う大企業、2階建ての農家(Two Trillion Dollar Power House or Two Storley Farm House)、どちらも私たちにとって大切なお客さまです」という発言を紹介し、大企業、中堅中小企業、コンシューマー向けの各製品を今後も継続するとしている。

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