VirtustreamとForrester Researchが2018年7月に実施した、企業のクラウドに関する意思決定権者727人を対象とした調査では、回答者の86%がマルチクラウド戦略を既に策定していると答えた。このことは、過去6年間に企業で起こったことをよく表している。企業はパブリッククラウド・プライベートクラウドのさまざまなリソースや社内のデータセンターを併用しており、そのすべてを「マルチクラウド」と呼ばれる1つのITアーキテクチャーの中に収めたいと考えている。
企業にとってマルチクラウドのための単一のアーキテクチャーと戦略を持つことは合理的だ。2つ以上のクラウドを利用している企業が戦略を必要とする理由はいくつかある。
- シャドーITや不注意なデプロイメント、複数のクラウドに分散する不必要なアプリケーションやシステムなどが原因となって、資産管理上の問題が発生することは多く、IT部門にはそれを管理することが期待されている。
- 特定のアプリケーションやデータをそれぞれのクラウドに展開する際の意思決定は、各クラウドの機能や価格、サービスに応じて、IT部門とユーザー部門が個別に独立して行うことができる。
- そのため大量のITリソースが複数のクラウド上に分散している状況が生まれるが、これを1つの傘の下で管理する必要がある。
マルチクラウド管理戦略は、どのクラウド上にあるかに関わらず、すべてのIT資産を1つのITアーキテクチャーで統合して取りまとめられるように設計されている。これは、あらゆる場所に一貫したセキュリティとガバナンスを適用し、データが適切に保管され、処理され、アクセスされる状態を確保するのに役立つ。
それに加え、効果的なマルチクラウド戦略では、社内にあるか、クラウド上にあるかに関わらず、すべてのIT資産を把握できるようになっている。また、マルチクラウド戦略は企業がクラウドのリソースにかかる経費を最適化するための手段でもある。クラウド経費の削減(あるいは、せめて経費を管理すること)は多くの企業にとって大きな悩みの1つだ。クラウドに関する無駄を省き、ベンダーロックインを迫る巨大なクラウドに対する投資を避ける必要もある。
複数のクラウドを利用しているのであれば、別々のクラウド上に分散しているIT資産を効果的に管理するためのマルチクラウド戦略を策定すべきだ。では、マルチクラウド戦略を策定し、導入するにはどうすればいいのだろうか。以下では、いくつかのベストプラクティスを紹介する。
1.運用に適した基本計画を3年ごとに定期的に定める
多くの企業はITに関する基本計画を持っているが、果たして実際に実行されているものはどれだけあるだろうか。
基本計画は「ハイレベル」なものになりがちで、その計画を実際に実行する立場の現場の管理職やスタッフにはきちんと伝わっていないことが多い。特にインフラに関する基本計画では(マルチクラウド戦略はこれに当てはまる)、その傾向が強くなる。なぜなら、普通の人にとってインフラは、企業が苦労して取り組んでいる分かりやすいITプロジェクト(例えば新しいERPシステムの導入や工場オートメーションのための大型投資など)に比べて、目に見えにくく、漠然としたものだからだ。