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PoC段階にとどまる日本のブロックチェーン活用--水面下では進行中

阿久津良和

2019-07-30 06:00

 日本マイクロソフトは7月29日、ブロックチェーンに関するプレスラウンドテーブルを開催した。ブロックチェーンの概要から海外事例、スタートアップ企業とのエコシステム拡大など幅広く紹介したが、本稿ではブロックチェーンに関する事例を取り上げる。

 ブロックチェーンの基本的な仕組みは、日常生活で用いるはんこに相当する「電子署名」、各種申込書や宅配便の伝票などカーボンコピーの書類に相当するデータに電子署名を付与した「データの共有」、改ざんなど不可能にする「台帳」、ネットワークを通じてデータ喪失を防ぐ「分散」で構成される。これに、一定のルールに沿ってデータ承認の是非を問う「コンセンサス」のアルゴリズムも関わるが、同社は「端的には複数の企業や個人間で真正性のある共有場所を設ける技術」(クラウド&ソリューション事業本部 インテリジェントクラウド統括本部 Azureアプリケーション開発技術営業本部 テクノロジーソリューションプロフェッショナル 廣瀬一海氏)と解説している。

日本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部 インテリジェントクラウド統括本部 Azureアプリケーション開発技術営業本部 テクノロジーソリューションプロフェッショナルの廣瀬一海氏
日本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部 インテリジェントクラウド統括本部 Azureアプリケーション開発技術営業本部 テクノロジーソリューションプロフェッショナルの廣瀬一海氏

 現在のブロックチェーンは、ビットコインに代表される仮想通貨などが用いる「パブリックブロックチェーン」、数社~数十社の企業が集まり合弁会社などで管理する「コンソーシアムブロックチェーン」、そして、1社単独で構成する「プライベートブロックチェーン」の3種類が主力で、同社のようにグローバルに事業展開する多国籍企業では、支店間の情報共有に用いられるという。

 このように、本人による能動的記録や未改ざんの証明が必要な書類など日常生活やビジネスシーンの利便性を向上させるブロックチェーンの活用シナリオは、各業界全体にわたる。例えば、製造業ではトレーサビリティー(追跡可能性)の文脈でサプライチェーンにおける透明性の向上がある。

 また、生活家電の作成時に部品のオークションを関係各所に提示し、安価なところから仕入れるサプライヤー契約のリアルタイムオークションも可能とする。小売業では、ポイントプログラムをブロックチェーンによって追跡情報を担保するデジタル報酬を実現するという。消費者向けヘルスケアでは、処方箋を薬局に持ち込まずにIDを提示するだけで薬を受領できるシステムや、特殊な症例に対して提供するオーダーメイド薬品の管理も同種の追跡情報を確保することで、誤配を未然に防げるとしている。IDCの調査によれば、ブロックチェーン市場に対するグローバルの出資規模は約124億ドルにまで拡大し、コンソーシアムの数も160団体まで拡大すると予測されている。

 同日の説明会で日本マイクロソフトは、SKILL、エン・ジャパンと人事分野におけるブロックチェーンの活用や実用化に向けて、コンソーシアムモデルのブロックチェーンの構築や共同検証をはじめとする連携を開始すると発表した。

 同社は、2015年からブロックチェーン基盤の導入と展開支援や、活用シナリオの啓発、概念実証(PoC)環境と技術支援を提供してきたが、廣瀬氏によれば、ブロックチェーン環境をゼロから構築するのは大変なため、同社ではMicrosoft Azureを中核とした多様なソリューションを展開する。

 一例では、既存システムとの連携開発キットにあたる「Azure Blockchain SDK」において、証跡データの確認後に添付ファイルの送信を行うといったサンプルコードを多数用意している。また、Visual Studio CodeではEthereum用アプリケーションの開発時のデバッグを容易にする「Azure Blockchain Development Kit for Ethereum」、2019年5月にはコンソーシアムブロックチェーンの構築を短時間で実現するという「Azure Blockchain Service」のプレビュー版の提供を開始した。

 これらのソリューションによるブロックチェーン活用事例も海外では多数あるという。2019年5月には、General Electricの航空部門であるGE Aviationが部品サプライチェーンにおける追跡計画を発表した。また、国際連合とMicrosoft、Accentureが、世界中の6人に1人が法的文書を所有していないという背景を踏まえ、共同でブロックチェーンを用いたデジタルIDシステムを開発した。現在では130万人以上の難民を登録し、ID検証を通じた難民の社会復帰を世界29カ国で支援している。

 Starbucksでは、小規模農家における信用力の確立と向上の支援、高い与信によるローンの利用を実現するため、コーヒー豆の動きを可視化している。この他にも、Microsoftとブロックチェーン企業のConsenSys、LVMHの3社が共同でブランド商品の追跡を可能にするコンソーシアムチェーン「AURA」を発表した。古い事例だが、2018年10月にはNasdaqが取引基盤である「NFF(Nasdaq Financial Framework)」とMicrosoft Azure Blockchainで強化した。

 他方で日本でのブロックチェーンのビジネス活用事例は、さほど多くないとされる。2018年11月にサンロフトが静岡県焼津市で、「Ethereum Proof-of-Authority on Azure」を用いて開発した電子地域通貨システムの実証実験を行ったほか、2018年10~11月には日本ユニシスと会津喜多方グローバル倶楽部、会津大学 産学イノベーションセンターが協力し、福島県喜多方市で電子バウチャー(引換券)の実証実験を行った。直近では2019年7月上旬に、日本マイクロソフトとJR東日本情報システム、みずほ情報総研、日本生命保険、あいおいニッセイ同和損害保険、MaaS Tech Japanが、MaaS(Mobility as a Service)とブロックチェーンを活用した有用性の検証に取り組むと発表した。

 ブロックチェーンの活用は、海外ではビジネスや人道支援といった領域で実運用に達しているが、日本では多くが実証実験にとどまる。この現状に対して日本マイクロソフトの廣瀬氏は、「過去4年間は国内でも相当数のPoCに取り組んできた。業務モデルを構築したPoCは増加傾向にあり、水面下であれば運用フェーズに移行するケースも存在する。(ブロックチェーンに対する運用や開発)経験値が積み重なれば数年内に実運用に至ると考えている」と述べた。

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