その必要はない。Appuswamy氏とHeinis氏によると、Microsoftが実証したDNAを媒体とした自動格納/復元システムの成果はそこにあるのだという。同システムの目的は、人間系を介在させずとも、これらの工程を実現できるということを示すというものだった。データセンターの日々の運用で、メンテナンス作業以外の人手が必要とされていないように、DNAベースのデータセンターでも人手を不要にできるのだ。
それでも、ハードディスクを合成DNAの集合体に置き換えるのは、まだまだ先の話となる。まず、DNAへのデータ格納は現時点でのテクノロジーではあまりにも時間がかかりすぎる。最初の試みにおいて、1メガバイトのデータを格納するうえで科学者らは1週間を要したという。
Appuswamy氏とHeinis氏は、この工程でのさらなる研究が必要だという点に同意している。ただ、この部分は両氏の専門分野ではないため、生化学的な合成プロセスの進歩を待つことしかできない。とは言うものの、いくつかの明るい兆しは得られているという。
まず、ストレージの速度が改善されてきており、現在では1秒あたり数キロバイト程度になっているのだという。SSDのようなメディアと比べても、まだずっと遅いとはいうものの、それでも大きく進歩してきている。そしてAppuswamy氏とHeinis氏は、特定の用途であれば現実的に受け入れられるかもしれないと考えている。その用途とはアーカイブストレージだ。
データベースエンジンは、デバイスの持つ幅広いコストパフォーマンス属性に応じて3種類のストレージティア(層)を想定している。まずパフォーマンスティアは、高パフォーマンスOLTP向けや、リアルタイムのアナリティクス向けアプリケーションによってアクセスされるデータを格納する層だ。
次にキャパシティーティアは、レイテンシーを気にしないバッチ処理でのアナリティクス向けアプリケーションによってアクセスされるデータを格納する層だ。3つ目のアーカイブティアは、セキュリティへの準拠度を監査する際や、法定監査の際などにしかアクセスされないデータを格納するための層だ。現時点でのアーカイブティアの主流は磁気テープとなっている。