今回は、「教育IT」シリーズの第3弾としてプログラミング教育について述べていきたい。舞台は、高校の情報科を扱った前回の記事の内容とは異なり、義務教育が行われている小学校の教育現場だ。小中学校では2020年からプログラミング教育が必修になる。特に6~12歳の幼少期は、非常に吸収力が高い。その時期の子供たちに全く新しい試みとして、プログラミング教育をするという。当然ながら、これまでの初等教育ではあまり想定されていないさまざまなことが起こりそうだ。まずは日本の教育史に残るであろう、初等教育でのプログラミングについて取り上げる。
変わりゆく日本の義務教育
義務教育は、その名の通り国民が子供に受けさせなければならない教育であり、同時に全ての国民に教育を受ける権利が与えられている。日本がこれを開始したのは近代化した明治以降だ。しかし、実は明治維新の近代化以前から日本は世界有数の識字率を誇る非常に教育熱心な国だった。世界史の“奇跡”として語られている明治維新や第2次世界大戦後の復興も、教育による国民の知識レベルの高さに支えられていたと言っても過言では無いだろう。
2020年に小学校でプログラミング教育が開始されることで、義務教育の歴史において過去最大級と言えそうな変革が起きるかもしれない。プログラミングは、従来の教育科目に比べてかなり異質であり、日本の初等教育や義務教育のイメージは少なからず以前とは違うものになると思われる。
もちろん、これまでも教育科目のマイナーチェンジは何度も行われている。例えば、小学校低学年の授業から社会科と理科がなくなって久しい。現在は国語と算数における理科の“要素”と社会科を統合した「生活」という科目になっている。また、英語教育も昔は中学生からだったが、既に小学校から段階的に英語活動および英語科目が導入されている。具体的には、小学校5年生から「外国語活動」という名称で、色や動物のような身近なものを英語で表現するというような指導が始まった。ちなみに、この「外国語活動」は、現時点では成績の評価はつかない。中学校で本格的に英語を学ぶ前の準備期間のような位置付けであるようだ。
しかし2020年には(2018年から移行期間として既に始まっており、2020年に正式に義務化される)、この「外国語活動」の実施がさらに2年前倒しになり、小学3~4年生から行われる。そして、小学5~6年生では成績がつく英語科が始まるという。中学の授業もこれまで通りではなくなるようだ。中学の英語の授業は、基本的に全て英語しか使わないオールイングリッシュで行われるようになり、英会話スクールや外国語大学で行われている授業に近い形式になるかもしれない。生徒もこの変更には驚くだろうが、教える立場である先生側のインパクトは、これまでの積み上げた経験がある分より大きいだろう。
このように、その時代に合わせて見直されてきた学習指導要領によって、教育はどんどん変わっている。特に2020年の変革は、英語とプログラミングという2つの大きなポイントがあり、その後の日本の義務教育は、筆者を含め読者の皆さんが幼少期に受けたものとはだいぶ違うものとなるはずだ。