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教育IT“本格始動”

教育IT“本格始動”--情報化時代、なぜか日本中から叩かれる教育現場

武田一城 (ラック)

2019-07-19 06:00

 筆者は、「企業セキュリティの歩き方」という連載を執筆しているが、実は「教育IT」の分野にも長年関わってきた。最近になってこの分野への注目が再び高まりつつある。そこで今回からいつもの連載から少し離れ、この分野について取り上げてみたい。

 その理由は、教育ITが日本の将来において非常に重要なことだからだ。学校教育を受けた子供たちが成長すれば、当然社会に出てくることとなる。その場合、多くは企業に属することになるだろう。また、一定レベルの教育を受けている人材でないと採用しないという企業も少なくない。当然、それらの企業のほとんどにITが導入されている。現代の企業にセキュリティ対策を無視することなども社会的責任において到底できるものではなく、それを守るのは、その企業や組織に所属する人たちだ。だからこそ、教育を受けた子供たちが社会に出てきて困ってしまうその前に、情報教育や教育ITについて考える必要がある。このような理由で、いつもの連載とは一見違和感のある「教育IT」という題材をあえて述べたい。

様変わりした小中高校の雰囲気

 筆者は20世紀末に学校教育を終えた。それから20年以上が経過し、大学卒業までの時間と社会人としての時間が同じくらいになっていることに驚く。そして、読者層の比率で多いと聞いている筆者と同世代の読者の皆さんも同じような気持ちかもしれない。

 さて、そのような私たちが受けた1980~1990年代の教育と現在の教育はかなり様変わりしているようだ。学校の先生は怖くなくなり、当時は珍しくなかった体罰なども現在では大問題だし、最近は、そのような事件があるという報道もめっきり聞かなくなった。先生も生徒も昔に比べると随分とおとなしくなったようだ。

 また、最近の教育と言うと、円周率を「およそ3」などと教える「ゆとり教育」が日本の教育を劣化させた全ての元凶といわんばかりにメディアで報道されたことも記憶に新しい。現在の教育というとこのイメージを持っている人も少なくないだろう。

 ただ、先進国が加盟している経済協力開発機構(OECD)による「学習到達度調査(PISA)」などによれば、ゆとり教育を受けた学生の方がそれ以前より良い結果(科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの各分野においていずれもトップクラス)を出しているとされている。つまり、マスコミなどが取り上げた「日本の学力水準が危機的状況」という報道は誤りだったと感じる。以下の図で示すように、世界的に見ても日本は高い教育水準を維持していることが数値として裏付けられており、しかも直近の10年間ほどは右肩上がりと言って良い状況だ。

OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)での日本の順位の推移(各種資料より筆者作成)
OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)での日本の順位の推移(各種資料より筆者作成)

 現在の教育現場は、以前に比べてかなり制約があるという。それは、マスコミ報道やお子さんの授業参観などで、皆さん自身が実感する機会も多いだろう。そのため、教師の仕事も以前とは比較にならないほど雑務が増え、非常に煩雑になっているようだ。しかし、そのような環境の中でも、上記のデータが示すように先生方はきちんと指導し、生徒は結果を出している。このことは常ならざる大健闘と言ってよく、本来ならばもっと賞賛されてもよいだろう。一方で、「学習到達度調査ばかりを重視しては教育の実態を見誤る」という意見もある。学力の向上と世界ランクが教育の全てというわけではなく、この指摘も十分理解できるが、少なくとも、マスコミ報道のイメージと大きく異なる意外な結果を出した教育現場は、掛け値なしに素晴らしいと思う。

 ただし、この素晴らしい結果にも1つだけ懸念される点がある。PISAの結果によると2015年の読解力のみ急激に低下しており、これはその年に始まったコンピューターを使った試験(CBT)に教育現場が不慣れだったことが一因とされている。このことは、日本の教育現場の情報分野における状況(このことについては、本連載の中の独自テーマとして後述する予定)とも重なっている。つまり、教師の指導力や生徒の学力ではなく、日本の教育現場におけるITの設備や環境が世界から大きく立ち遅れていることを示していると思われる。現在の日本は、少なくともこの分野では皆さんのイメージにあるような先進国などではない。どうやら日本は世界の情報化の大きな波についていけず、IT後進国になり始めているようだ。

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