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AIの品質を「人間の水準」に近づける--“人間参加型”のAI開発とは

Charly Walther (Lionbridge)

2019-08-22 07:00

 2019年に入って人工知能(AI)に関する否定的な報道が多くなっています。「今のAIは求められている機能を十分に果たしていないのではないか」「これ以上の進歩はないのではないか」――といったネガティブな論調が増えています。

 実際、世界的にAIの開発は遅れています。感情分析、検索関連性、音声/画像認識、自動運転をはじめとするさまざまなAIの能力は、まだ人間と同等の水準には至っていません。

 その理由にAI開発者の不足が挙げられます。世界中のAI技術者の数はたったの30万人なのに、何百万人もの技術者が必要とされているのです。単純に、AIの背後にある複雑な技術をしっかりと理解して発展させられる人材が不足しているのです。

 世界的にAIが注目され、この分野を目指す人が増えてきていますが、それでも人材が足りない状況が今後も続くと考えられます。

 それに、高品質なアルゴリズムは高品質なデータからのみ生まれます。しかし、多くのAI開発企業にとって高品質で偏りのないデータを大量に収集して整理するのは困難だという調査結果が出ています。

 そこで、AIのレベルを高めるために最近注目を集めている開発手法の一つが人間参加型(ヒューマン・イン・ザ・ループ)のAI開発です。

人間参加型AI開発とは?

 人間参加型AI開発は、人間と機械の知識を組み合わせて、アルゴリズムを学習させる方法です。人間がアルゴリズム構築の学習段階とテスト段階の両方に関わり、絶え間ないフィードバックループができるため、回を重ねるごとにアルゴリズムの結果は向上していきます。

人間参加型AI開発の概要
人間参加型AI開発の概要

 学習段階では、人間が元の学習データにラベル付けを施します。これには入力データと、それに対して期待される出力も含まれます。次に、人間が機械に学習データを与えます。アルゴリズムに既知量を提供して将来の判断をサポートするこのプロセスは教師あり機械学習 (Supervised Learning) と呼ばれており、線形回帰、ロジスティック回帰、多項分類、サポートベクターマシンなどのアルゴリズムが含まれることもあります。

 アルゴリズムはこの「正解」データに基づき、ニューラルネットワークのようなテクノロジーをどのように適用すれば、学習して洗練された結果を出せるか、学習データを理解してパターンや関係性を見い出せるかを学びます。最終目標は、新たなデータを提示された際に、アルゴリズムが正しい決定を下せるようになることです。

 テスト段階と評価段階における人間の役割は、簡単に言うと、機械が導き出した誤った結果を訂正することです。この段階では、人間はアルゴリズムが判断に確信を持てない結果を訂正することに集中します。確信度の低いユニットを人間が取り扱い、アルゴリズムへフィードバックするこのプロセスは、能動学習 (Active Learning) と呼ばれています。

 人間が注意を向ける必要があるもう一つのケースは、アルゴリズムが誤った結果に対して確信を持ち過ぎている場合です。テスト段階における目標は、より優れた判断ができるように機械をさらに学習させ、次に判断を下す際には、人間が介入しなくても正しい結果を出せるようにすることです。

人間参加型AI開発の活用事例

 人間参加型の機械学習は、自然言語処理やコンピュータービジョン、文字起こしなどのあらゆるディープラーニングAIプロジェクトで使用でき、特に以下の状況で役立ちます。

1.アルゴリズムの誤りの代償が極めて高い場合

 例えば、医療診断や経過予想、治療など、ミスが許されない機械のアルゴリズムを使用する時です。

2.現在入手可能なデータが不足している場合

 人間の方が機械よりも一般的に優れた判断を下せます。一定量の学習データとテストデータが利用できるようになると、機械が人間に取って代わり、より優れた判断を下すようになります。

3.探しているデータが珍しいものである場合

 例えば、特定の人物の顔写真を見つけるために画像認識を使用する場合です。このような状況においては、機械知能はその人物を表していない画像を確信を持って除外し、膨大な画像の中から対象を狭めることにより、多くの時間と経費を節減できます。その後、最終段階でタスクは人間へ引き渡され、人間は似たような顔の画像の中から正しいものを見つけることに専念できます。

Charly Walther
Lionbridge AIプロダクト&グロース担当バイスプレジデント
ベルリン出身。イエール大学卒業。サンフランシスコでKPCB Product Fellow、Uber(Uber Advanced Technologies Group)のプロダクトマネージャーを経て2017年にGengoへ参画。2018年12月、GengoがLionbridgeに株式取得されたことにより、現在はLionbridge AIの開発に従事。

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