IIJとアドバンテック、IoT分野での協業を発表

渡邉利和

2019-08-23 10:03

 台湾のAdvantechとインターネットイニシアティブ(IIJ)は8月21日、Advantechがグローバル提供する産業分野向けIoTプラットフォーム「WISE-PaaS」の日本での展開に関して協業することを発表した。WISE-PaaSをIIJのネットワーク網およびクラウドインフラストラクチャーサービス「IIJ GIO」上に実装する。ユーザーへの提供はAdvantechのパートナー「Domain-Focused SI(DFSI)」の事業者(国内では日本ラッド)を通じて行われる。

WISE-PaaS JPの基本的な構成
WISE-PaaS JPの基本的な構成

 同日の記者会見では、まずIIJ 常務執行役員の立久井正和氏が、同社のIoT事業の概況として、同社のモバイル回線契約数の推移に基づいて紹介した。同社は、フルMVNO(仮想移動体通信事業者)として無線通信サービスを提供しているが、2017年に法人契約数が個人契約数を上回った。以後は個人契約数の伸び率を大幅に上回るペースで法人契約数が伸びており、さらにその6割以上がIoT用途と見られているという。立久井氏はIoT事業の手応えについて、「ようやくここ数年ほどで事業としての成長が現実のものになってきたようだ」とした。

 また、IIJ IoTビジネス事業部長の岡田晋介氏が、日本で展開する「WISE-PaaS JP」の全体像を紹介、IoTソリューション全体を下層から「エッジデバイス」「ネットワークサービス」「クラウドサービス」「PaaS&ソリューション」の4階層に整理した上で、IIJが強みを持つネットワークサービスとクラウドサービスと、Advantechが強みを持つエッジデバイスとPaaS&ソリューションを補完的に組み合わせた形になっていることを強調した。その結果、アプリケーションからネットワークまでを一体化したサービスとして利用できる点が特徴だとした。さらに、同社のネットワークの特徴だとする「セキュアな閉域ネットワーク」や「マルチクラウド連携」もメリットをもたらすと紹介した。

WISE-PaaS JPの提供方法
WISE-PaaS JPの提供方法

 AdvantechのCTO(最高技術責任者)を務める博士のAllan Yang氏は、WISE-PaaSのコンセプトについて、「全産業分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性」だと強調した。現在急速に進行しつつあるDXの取り組みは、基本的にはITとしての取り組みであり、ITと対極的に語られるOT(制御系技術)/産業設備の分野にはまだ波及していない。

Allan Yang氏による「全産業分野でのDX実現」のための道筋。クラウドとWISE-PaaSを組み合わせ、特定の業界/分野向けのノウハウを有するDFSIがアプリケーションやソリューションの開発を支援することで産業分野のDXを実現できるという
Allan Yang氏による「全産業分野でのDX実現」のための道筋。クラウドとWISE-PaaSを組み合わせ、特定の業界/分野向けのノウハウを有するDFSIがアプリケーションやソリューションの開発を支援することで産業分野のDXを実現できるという

 こうした状況を踏まえてYang氏は、製造業などの産業分野でもデータに基づき、AI(人工知能)技術などを活用した高度な意志決定や予測などを行うIndustrial AIoT(産業分野におけるAIとIoT)の実現に取り組む必要があるとし、同社のWISE-PaaSがそのための具体的なソリューションと位置付けた。なお、同氏によるとWISE-PaaSは、「Foundation Layer」と「Visualization/Asset Performance Management/AI Framework Service Layer」の2層で構成されるデータプラットフォームであり、その80%はオープンソースコード、残りの20%は自社開発のマイクロサービスアーキテクチャーに基づくコードだという。オープンソースをベースにしていることで、開発者にとってなじみやすく、迅速なアプリケーション開発が可能だという。

 最後に、Advantech日本法人のインダストリアルIOTグループ iFactory事業部 ディレクターの古澤隆秋氏が、今回の協業に関する同社の立場を説明。同氏は、まず同社自身を「産業用PCの専門メーカー」と位置付けた上で、この分野ではグローバルで30%超のシェアを持つマーケットリーダーだと紹介した。また、WISE-PaaSの機能はオンプレミス向けにも提供可能で、既に国内では10社以上のユーザーが存在するという。だが、今後のAI/データドリブンといったトレンドに対応していくためにはオンプレミスだけでなくクラウドへの対応も必須と考え、国内でクラウドサービスとして提供するパートナーにIIJを選択したという。

 なおWISE-PaaSは、グローバルでは複数のパブリッククラウドで利用できるが、日本では基本的にIIJ以外のクラウドの利用は想定していないという。WISE-PaaS JPは2020年1月から提供する予定で、日本語による導入支援やサポートも行う。WISE-PaaSマーケットプレイスを通じてオンライン購入でき、DFSIパートナーなどからインテグレーションサービスが提供される。

 IIJは、基本的にはAdvantechに対してネットワーク/クラウドサービスを提供する立場だが、同社自身がIoTビジネスに注力しており、さらにインテグレーションサービスの提供も行っていることから、今後は同社が強みを発揮できる分野では自らWISE-PaaSを前提とするインテグテーションサービスを提供する可能性もあるとしている。

アドバンテック インダストリアルIoTグループ iFactory事業部 ディレクターの古澤隆秋氏、Advantec CTOのAllan Yang氏、IIJ 常務執行役員の立久井正和氏、IIJ IoTビジネス事業部長の岡田晋介氏(左から)
アドバンテック インダストリアルIoTグループ iFactory事業部 ディレクターの古澤隆秋氏、Advantec CTOのAllan Yang氏、IIJ 常務執行役員の立久井正和氏、IIJ IoTビジネス事業部長の岡田晋介氏(左から)

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