海外コメンタリー

COBOL誕生から60年--これからも生き続ける理由

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2019-09-13 06:30

 筆者がプログラミングの世界に足を踏み入れて初めて使った言語は、IBMの「System/360」用アセンブリー言語だった。これは初めての言語としてお勧めできる代物ではないかもしれない。しかしコンピューティングの黎明期において、使用できる言語はマシン語とアセンブリー言語しかなかったのだ。当時のコンピューターサイエンスはまさしく「サイエンス」だった。初期の大型メインフレームのためにも、より簡単な言語が求められていたのはあらためて言うまでもないだろう。そして、そういった目的を実現する言語の仕様が策定され、1959年9月にCommon Business-Oriented Language(COBOL:共通事務処理用言語)と名付けられた。

 COBOLに対する貢献者/推進者としてはGrace Hopper氏が有名だ。しかし、その基本的発想に対する栄誉はMary Hawes氏に与えられるべきだ。同氏は当時、Burroughsのプログラマーであり、コンピューター言語の必要性を痛感していた。1959年3月、Hawes氏は新たなコンピューター言語の作成を提案した。それは英語に近い語彙(ごい)を有しており、基本的な事務処理を、さまざまなコンピューターをまたがって実行できるというものだった。

UNIVAC I
「UNIVAC I」のコンソールを囲むプログラマーたち(Donald Cropper氏、K.C. Krishnan氏、Grace Hopper氏、Norman Rothberg氏)
提供:IEEE History Center

 Hawes氏は、ベンダーに縛られない、相互運用性を有したコンピューター言語の開発に向け、Hopper氏やその他の人々と議論を重ねた。Hopper氏は、この無名の言語の顧客となり得る米国防総省(DoD)に対して資金供与を求めてアプローチすることを提案した。

 そしてビジネスIT分野の専門家らによる合意の下、コンピューターのユーザーと製造業者41名が1959年5月にペンタゴンでミーティングを開催した。そのミーティングの場で、Conference on Data Systems Languages(CODASYL:データシステム言語協議会)の短期委員会が結成された

 CODASYLは、Remington Rand UNIVACのFLOW-MATIC(その開発にはHopper氏が大きく関与していた)や、IBMのCommercial Translator(COMTRAN)といった初期の事務処理用コンピューター言語にならい、COBOLで記述されたプログラムは日常的に用いられる英語とよく似たかたちであるべきだと規定した。

 DoDやIBM、UNIVACのサポートがあったとはいえ、COBOLの将来は先の見えない状況が続いていた。さらに、Honeywellは未来の事務処理プログラミング言語として、FACTという独自言語を提案した。このためしばらくの間、初期の事務処理開発者はCOBOLプログラマーではなく、FACTプログラマーになると思われていたが、当時のハードウェアでFACTがサポートされることはなかったため、COBOLに再び光が当たるようになった。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    初心者にも優しく解説!ゼロトラストネットワークアクセスのメリットと効果的な導入法

  2. ビジネスアプリケーション

    改めて知っておきたい、生成AI活用が期待される業務と3つのリスク

  3. ビジネスアプリケーション

    ITR調査結果から導くDX浸透・定着化-“9割の国内企業がDX推進中も成果が出ているのはごく一部”

  4. セキュリティ

    「iPhone」の業務活用を促進!セキュリティ対策で必ず押さえておきたいポイントとは?

  5. セキュリティ

    「2024年版脅威ハンティングレポート」より—アジアでサイバー攻撃の標的になりやすい業界とは?

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]