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ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」

第10回:「ベンダーは悪人、ユーザー企業は善人」というベンダーロックインは勘違い?

取材・構成=翁長潤、國谷武史

2019-09-25 06:00

 本連載は、元ソニーの最高情報責任者(CIO)で現在はガートナー ジャパンのエグゼクティブ プログラム グループ バイス プレジデント エグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏が、ガートナーに在籍するアナリストとの対談を通じて日本企業のITの現状と将来への展望を解き明かしていく。

 今回のテーマは、「ITベンダーとユーザー企業との健全な関係性」だ。デジタル化が進む昨今、IT部門は先端のテクノロジーを取り入れ、より経営へ直接的に貢献することが期待されている。そうした中では、現在のベンダーとの契約や管理の在り方を見直すだけでなく、改めて最適なパートナーを選ぶ必要に迫られる。一体、どのようなアクションを取るべきなのか。ベンダー契約・交渉分野をリサーチしている海老名剛氏に、そのヒントを尋ねた。

グローバルな舞台で新しいことに挑戦し続けたい

長谷島:まずはガートナーのアナリストになろうとしたきっかけを教えてください。

海老名:大学卒業後にグローバルな舞台で絶えず新しいことができる仕事をしたいと考え、IT系ベンダーに就職しました。その後はコンサルティングファームで経験を積む中で、より多くの人に自分の考えていることをメッセージとして発信したいと強く思うようになりました。そこでガートナーを知り、「こういう働き方があるんだ」と興味を持って10年前に入社しました。思った通りのやりがいのある仕事に取り組んでいます。

長谷島:入社当時に思っていた仕事の重要性と現在を比較してみると、その重要性は増していると感じますか。

海老名:はい。年々テクノロジーの重要性も増しています。去年までのGartner Symposium/Xpoでは「Digital Business」を打ち出していましたが、2019年のテーマは「Leading the Digital Society」(デジタル社会をリードする) です。テクノロジーは、単に一つの企業のビジネスが成功するというだけではなく、社会的な責任を担うようになり、その分リスクも大きくなっています。その意味では、テクノロジーの影響範囲がかなり広がっていると感じます。10年前と比べ、自分が発言することへより多くの人々に耳を傾けてもらえるようになったとも感じています。

ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ソーシング&ITマネジメント バイス プレジデントの海老名剛氏。ITサービスに関する市場調査およびアドバイザリー業務を担当。企業向けITシステムの企画・設計から導入、運用まで、ITサービス全般にわたる動向分析と、その結果に基づく提言を行っている。ガートナー ジャパン入社以前は、大手ERPベンダーおよびコンサルティングファームで、製品マーケティング、業務アプリケーションの導入コンサルティングに従事。一橋大学大学院国際企業戦略研究科卒
ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ソーシング&ITマネジメント バイス プレジデントの海老名剛氏。ITサービスに関する市場調査およびアドバイザリー業務を担当。企業向けITシステムの企画・設計から導入、運用まで、ITサービス全般にわたる動向分析と、その結果に基づく提言を行っている。ガートナー ジャパン入社以前は、大手ERPベンダーおよびコンサルティングファームで、製品マーケティング、業務アプリケーションの導入コンサルティングに従事。一橋大学大学院国際企業戦略研究科卒

長谷島:今回の「Gartner IT Symposium/Xpo 2019」のチェアを務められますね。テクノロジーが進化して、ビジネスや社会全体がテクノロジーに依存するようになると、良い部分だけではなく、影の部分も出てきます。そこに対する配慮もしっかりと行うべきですが、その辺りのバランスの取り方が難しいと思います。IT部門の役割や仕事のやり方も、この10年で大きく変わってきていますね。

日本のベンダーとユーザー企業との関係性は健全か?

長谷島:海老名さんの担当領域を教えてください。

海老名:テクノロジー動向そのものよりは、ベンダーとユーザー企業の関係性にフォーカスしたリサーチをしています。例えば、ITコンサルティングサービス、システムインテグレーションサービス、運用のアウトソーシングサービスなどをどうベンダーと一緒に、一番いい形にしていくかについて取り組んでいます。

 日本でもユーザー企業からのニーズが高まっている分野に、ソフトウェアのライセンス契約交渉に関するアドバイザリ業務があります。さらにはクラウドサービスの契約についても、ユーザー企業が不要なリスクを避けながら100%の成果をどう得られるかについて、相談を受けることが多くなっています。ベンダー側にとっても、ビジネスとしてユーザー企業といい関係となるようにどのように契約を取り交わしていけばいいのかを意識しています。ベンダーとユーザー企業とのやりとりをリサーチの主なテーマに据えています。

長谷島:日本は、ベンダーなくして企業のITマネジメントができないのが現状ですね。企業体質の面も含めて、ユーザー企業はベンダーに高く依存し、これからも大きく変わりそうにもありません。一方でこれまでのような関係性がこれからも同じように続くこともないでしょう。ベンダーとユーザー企業の関係性はどのように変化すると見ていますか。

海老名:両者の関係性には、変わらない部分と変わる部分があると思います。変わるべき部分は、会社全体に対して影響力のある分野に関しては、できるだけ社内の人間で取り組み、アウトソーサーに任せ切りにするのを避けるべきです。変わらない部分としては、テクノロジーの専門家である彼らをうまく使って“コ・ワーク”(共同作業)していくことだと思います。

 日本のIT部門は外部のサポートに頼り過ぎた面がありましたが、急にベンダーに頼らなくなることもないでしょう。一緒にやっていくこと自体は変わりませんが、そのやり方に変化が現れていると思います。

長谷島:昨今の大きな変化としては、従来のオンプレミスからクラウドへの流れに象徴されるように、自分たちで持たなくても、使った分だけ払うという契約形態が出てきていると思います。従来とは、契約の仕方がずいぶん変わってきました。企業にとって大事な部分だと思いますが、この変化にうまく対応できているのでしょうか。

海老名:残念ながら、ユーザー企業は今までと同じやり方で進めようとする傾向が強いです。クラウドで把握すべきリスクには、オンプレミスとは違うところがあります。そこがまだまだ認知されていないですね。一方のベンダー側も、クラウドのメリットをユーザー企業が100%享受できる形で提案ができているかというと、必ずしもそうではありません。ベンダー側のリスクヘッジという観点で提案されていることも少なくありません。契約交渉上のやりとりでは、お互いを理解し合いながら双方にとっての契約の価値を高めていく余地がまだあると思います。

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