日本ヒューレット・パッカード(HPE)は9月24日、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)製品の新モデルとして「HPE SimpliVity 325 Gen10」、遠隔地に秒速でバックアップが可能という「HPE SimpliVity 380 Backup and Archive node」、システム分析予測サービス「HPE InfoSight」のHPE SimpliVity対応を発表した。
今回の発表により、同社はHPE SimpliVity製品のさらなる顧客層拡大を狙っているという。
管理の簡素化で属人化を排除
HPE SimpliVityは現在、HPEが得意とする大企業だけでなく、従業員20人といった企業にも購入されているという。その理由として、同社ハイブリットIT事業統括 ハイブリットIT製品本部 製品部エバンジェリストの山中伸吾氏は、他社製ハイパーコンバージド製品と異なり顧客の「今日の課題にしっかり応える」とともに、導入により顧客は「将来的にハイブリッドクラウドの道に"気づいたら"のっている」という同製品の特徴を挙げる。
山中伸吾氏
採用ケースは大きく2つに分けられるという。システムを管理できる人が限られる「属人化」が発生しているケース、そして、毎日のバックアップが時間内に終了しないというケースだ。
属人化については、HPE SimpliVityを導入することで「仮想マシン中心型管理」による対応が可能となる。
仮想マシンのバックアップを考えた場合、従来型システムでは、まず、対象となる仮想サーバーが動作する物理サーバーの特定、物理ストレージの特定、そして、バックアップという手順になる。これを実行できるのは、物理システムの構成や構造を理解しているスタッフのみとなる。これが属人化の原因となる。
これに対して、仮想マシン中心型管理では、対象となる仮想マシンのみを管理すればよくなる。どの物理サーバー上で動作しているかにかかわらず、仮想マシンをクリックするだけでバックアップが完了するので、物理構成を理解していなくてもシステムの管理が可能になるという。
「旧来の仮想システムの管理をしていた人からすると"気持ち悪い"となる。自分の仮想マシンがどこの物理サーバーで動作しているか認識できないためだ。だが、逆に、それを断ち切らないと属人化はいつまでも残る」と山中氏は述べるとともに、「パブリッククラウドが世の中に出てきたときと似ている」と指摘する。「パブリッククラウドは、どこの物理サーバーで動作しているか分からないので気持ち悪い。だが、それを断ち切ることにより、TCO(総所有コスト)が下がる」(同氏)
HPE SimpliVityの操作は、VMwareの管理ソフトウェア「vCenter」に統合されているため、単一画面からの管理が可能となり、仮想マシンがどこの物理サーバーで動作しているかを意識しなくてもよくなっている。
このように、仮想マシン中心型管理では、「すべての仮想マシンがどのプラットフォーム上でも自由に移動して稼動できる状態になる」(山中氏)ため、物理システムに縛られない柔軟な仮想マシン管理ができるというメリットがある。その結果、属人的な運用が解消され、運用が標準化される。これは、ITスタッフの働き方改革につながる。
さらに、システムのクラウドレディ化も進む。「物理サーバーにとらわれないシステムが自社内で構築されてしまえば、パブリッククラウドとつなげるだけでハイブリッドクラウドになる」と山中氏。HPE SimpliVityの仮想マシン中心型管理を導入することで、今ある課題を解決しながらも、将来のハイブリッドクラウド化を見据えたシステム改革を"気づいたら"実現できているという。
毎日のバックアップが時間内に終了しないというケースについては、HPE SimpliVityの秒速バックアップにより対応が可能となる。
ある国内の流通サービス業の事例では、約100台の仮想マシンがある事業運営用サブシステム仮想化統合基盤において、毎日午前1時から4時のシステム停止時間内にバックアップを取っていた。だが、その時間内に終了しなくなってきたことから、仮想マシンの増設ができなくなったという。そこで、HPE SimpliVityを導入し、バックアップを実行したところ、3時間の作業を1分で終了させることができるようになったと山中氏は明かす。