日本ヒューレット・パッカード(HPE)は10月23日、グローバルで提供しているエンタープライズ向けのクラウドストレージサービス「HPE Cloud Volumes」を11月1日から日本でも提供すると発表した。
同サービスは、現段階ではAmazon Web Services(AWS)とMicrosoft Azureに対応しており、Google Cloud Platform(GCP)も近々対応を予定する。これらのクラウド環境上で実行されている仮想マシンからiSCSI接続ができるほか、オンプレミスで運用されている同社のNimble Storageからは筐体間レプリケーションのイメージデータでコピーできるようになっている。

HPE Cloud Volumesのサービスイメージ(出典:HPE)
同日の記者会見で説明を行ったHPEストレージ&ビッグデータ、クラウド・データサービス担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのAshish Prakash氏は、ハイパースケールのパブリッククラウドが、全てのユーザーのあらゆるワークロードに対する最適解となるとは限らないとの見解を述べた。その上で、具体例として「データを保護しつつ、コピーしたり移動したりするのは極めて困難」とも語り、特定のクラウドプラットフォームにデータがロックインされてしまう懸念を抱くユーザーが多いと指摘した。
HPE Cloud Volumesは、特定のクラウド環境にロックインされず、さまざまなクラウド上で実行されるワークロードから自由にアクセスできるクラウドストレージサービスとする。Prakash氏は、端的に「HPEから提供されるパブリッククラウドサービスだ」と語った。

米Hewlett Packard Enterprise HPEストレージ&ビッグデータ、クラウド・データサービス担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのAshish Prakash氏
ハイブリッドIT事業統括 データプラットフォーム技術本部 エバンジェリストの高野勝氏は、新サービスの機能や特徴について、デモを交えて紹介した。HPE Cloud Volumesでは、米国東西地域や欧州に続くアジア太平洋地域初のサービス拠点として東京にデータセンターを開設している。データセンターやネットワークの詳細については触れなかったが、ネットワークサービスの「AWS Direct Connect」や「Azure Express Route」を介してそれぞれの東京リージョンと閉域網接続されているようだ。
基本的な設定操作や運用管理は、ウェブインターフェースを介して行うほか、同社のAI(人工知能)レコメンデーションエンジン「HPE Infosight」にも対応し、サービスの使用状況に関する詳細な情報も容易に把握できる。利用可能なストレージタイプとして、パフォーマンス重視の「プレミアムフラッシュ(オールフラッシュ)」とバランス型の「汎用フラッシュ(ハイブリッド構成)」の2種類が用意され、課金額は「容量」と「IOPS設定」を軸に決定される。

HPE Cloud Volumesの現時点でのサービス提供拠点(出典:HPE)
本番ボリュームの容量はプロビジョニングされた量になるが、クローンやスナップショットに関しては、作成時点では追加課金は発生せず、差分データが生じて実際の容量が増加したタイミングで課金される。さらに、レプリケーションやスナップショットではIOPS単位での課金が免除される。このため例えば、災害対策用にオンプレミスのNimble StorageにあるデータのレプリケーションをHPE Cloud Volumesに保存しておくような場合、通常はIOPS設定を最低値にして課金を節約し、必要な際に適切な値にIOPSを設定し直して運用を開始するといった使い方ができる。なお、課金額の計算は1時間単位でこまめできるとのことだ。
最後に、ハイブリッドIT事業統括 ハイブリッドIT製品統括本部 製品部 カテゴリーマネージャーの関根史和氏は、HPE Cloud Volumesの販売施策について説明した。まず提供されるメニューは3種で、「プリペイドパック」を購入し、パックに含まれるクレジットで課金額を支払っていくというプリメイドモデルになる。また、各種キャンペーンも行う。
今回のサービスは、Nimble Storageの利用が必須というわけではないものの、レプリケーションやスナップショットによるオンプレミスとのデータ移行が容易になるなど、Nimble Storageユーザーでの使いやすさを特徴付けた環境となっている。このため同製品のユーザーから利用が始まると見られる。同社では今後3PARなど他ブランドのストレージのサポートも拡大していく計画だという。