東日本電信電話(NTT東日本)は10月25日、自社の通信ビル内に地域文化芸術のデジタルデータを集積し、テクノロジーを用いて地域の文化や芸術を発信する取り組みを開始すると発表した。これにより、地方創生を目指すとしている。
これまで NTT東日本は、農業や窯業、酒造などの分野でITを活用した地域文化の伝承に取り組んできたとしている。その中で、地元住民から「地元の文化芸術を守りたい」「文化芸術を通して地域活性化につなげたい」といった要請を受けてきたという。同社は、地域の文化芸術のデータを集積・発信することにより、地域と地域・日本と世界をつなぐことを目指している。
NTT東日本によれば、この取り組みでは、通信ビルや高速ネットワークの閉域網といった同社の通信インフラにおける安全な環境・低遅延・耐災害性という特性を生かす。文化芸術のデジタルアーカイブに必要な文化財の権利保護、滑らかなコンテンツ配信、災害などからの回復に対応していくとする。また、協業パートナーが提供するコンテンツとNTT東日本の資産を組み合わせたデジタルデータの集積・発信により、時間や場所を超えて文化芸術に触れる機会を拡大する。さらに、仮想現実(VR)やプロジェクションマッピングなど、デジタルならではの仕掛けにより表現の幅を広げることで、地域の文化芸術をより魅力的に伝えていく。
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この取り組みは、文化芸術作品のデジタル化技術を保有する企業や、文化資産を保有するさまざまなパートナーとともに進める。デジタルアーカイブを活用して地域の文化芸術を伝承することを検討している団体に提案していく。
今回の施策でのコンセプトを伝える場として、画像のデジタル記録などを行う企業アルステクネ・イノベーションと協力。2019年11月1日から2020年3月1日まで、山梨県立博物館が所蔵する葛飾北斎の「冨嶽三十六景」などの作品を題材とした体験型美術展「Digital×北斎【序章】」を開催する。
山梨県立博物館が所蔵する作品は、これまで傷みやすいなどの理由で公開が大きく制限されていた。アルステクネグループは、独自の超高品位質感情報記録処理技術「DTIP」を用いて、北斎の浮世絵作品から20億画素のデジタルデータを作成することで、和紙一本一本の繊維の質感までを再現するという。加えて、このデジタルデータから作成された山梨県立博物館所蔵の認定マスターレプリカ47作品や、オルセー美術館の認定リマスターアート作品12点も公開する。その他、4Kデジタル配信絵画や裸眼VR、リアルな絵画が動くムービングアートピクチャーなど、さまざまなデジタルアプリケーションを用いて、デジタル化で解明された事実や世界に影響を及ぼした北斎の謎を楽しみながら体感できるとしている。
展示イメージ(出典:NTT東日本)