クラウドサービスは飛躍的な成長を続けています。クラウドサービスによって成長や革新を実現した事例が、毎日のようにIT関連のメディアに登場しています。その中で、ほとんどの場合、「クラウド」という言葉はAmazon Web ServicesやMicrosoft Azure、Googleを意味しています。ハイパースケールパブリッククラウドの分野で、彼らが群を抜いた成功を収め、認知度も高いプロバイダーだからです。
しかし、この3社が完全にクラウド市場を独占したわけではありません。市場にはまだ、クラウド上のリソースを活用してアプリケーションやシステムサポートなどのサービスを顧客企業に提供するサービス事業者である“マネージドクラウドサービスプロバイダー(MCSP)”に対する根強い需要があります。
筆者は、パブリッククラウドに関する専門知識を幅広く有しているMCSPが多くの企業にとって、スマートな選択肢となると考えています。そしてその理由として、次の4点を考えています。
1.パブリッククラウドへの円滑な移行が短期間で可能になる
オンプレミスのITインフラストラクチャをハイパースケールパブリッククラウドに移行すれば、それでクラウド化が完了する、という間違った認識を多くの企業が持っています。それだけで成功した事例もありますが、オンプレミスとクラウドの間でネットワーキングやセキュリティ、コントロールプレーンなどの基本的なシステム環境が異なるため、現実にはすぐに問題が生じ移行作業が遅延します。
MCSPの力を借りれば、ユーザー企業は、彼らが運用管理しているサービス環境上に、オンプレミス環境のほぼ完全なミラーを構築できます。あるいは、彼らの専門知識により、パブリッククラウド環境と自社環境を短期間で統合できます。
サービス開始までのスピードが競争優位に大きく影響するデジタルトランスフォーメーションの時代に、短期間での移行は大きな意味があります。筆者は、数多くのMCSPが、ユーザー企業がハイブリッド環境へ移行する際のサポートの中心的な役割を果たすことになると考えています。
2.クラウドへの移行によるコスト削減効果を正確に試算し達成可能になる
「クラウドは献金ではない」。これは筆者のお気に入りのフレーズです。パブリッククラウドへの移行によりコストを削減できる、とは、実は一概には言えません。
パブリッククラウドは、ワークロードが予測困難なほど大きく変動する場合や、ワークロードをリモートへ配備する場合、あるいはあらかじめ構成定義が明確に行われたサービスを稼働させる場合には、インフラコストの削減に非常に有効です。
しかし、ワークロードの変動が小さくインフラの必要量が予測できる場合は、コストの削減効果はたいしたことはありません。有力なパブリッククラウドプロバイダー各社がマーケットリーダーを目指して競い合う中で、ユーザー企業が自社に最適なパブリッククラウドを自ら比較検討し選択することは簡単ではなくなってきました。
その中でMCSPは、パブリッククラウドのコスト体系を継続的に精査するとともにデータやサービスを最適なクラウドに配置する技術力と知見を有し、ユーザー企業の投資対効果(ROI)向上に貢献できます。