注文住宅を手掛ける坂井建設(大分県大分市、従業員76人)は顧客情報管理システム(CRM)を「Zoho CRM」に刷新、残業時間を6割削減できたという。ゾーホージャパンが11月27日に発表した。
1961年に創業した坂井建設は60年近く住宅建設に携わってきており、現在は「サラダホーム」というブランドで新築事業がビジネスの柱となっている。加えてリフォーム事業や不動産事業も展開、住まいに関わるサービスをワンストップで提供する“デパートのような工務店”を目指している。住宅業界にとどまらずITや介護など事業領域を拡大するとともに福岡県をはじめとする九州やアジアへの進出にも取り組んでいる。
坂井建設は全社で顧客情報を一元管理するためにCRMを2014年にに導入。工務店に特化した仕組みをそのままCRMに当てはめていたため、多くをカスタマイズ。その結果、使いづらいものになっていたという。現場に対してCRMを活用するメリットをうまく伝えられず、現場にとっても手間が増えるといった抵抗感を抱かせることになり、定着の妨げになっていたと説明している。
そこで2016年に新たなCRMの導入の検討を開始した。検討段階で重要になっていたのが、同社にとって懸案だった、異なる事業部門間での顧客情報の一元管理だった。
時間をかけてCRMの検討を進める中でZoho CRMであれば、商談のタイプが異なっていても、3種類の商談ステージのレイアウトを活用することで一元管理できること、カスタマイズも自社でできるため、追加コストをかけることなく、現場のニーズに応えられることが分かり、Zoho CRMの採用を決めた。
以前のCRMからの移行には多くのカスタマイズや膨大なデータ移行を自社で進めたために半年かかったが、2017年にはZoho CRMが本格稼働。経営トップが作成して全従業員に配布される経営計画書の中でZoho CRMの利用が強調。現場の営業スタッフに対しては月1回の勉強会でCRM活用のメリットを説明するとともに、勉強会で出た要望を吸い上げるなどトップダウンとボトムアップの両面で現場への定着を進めた。
同社では、時間をかけずに利益を追求するという考え方を社内に浸透させており、残業時間の制限などの施策とあわせて、Zoho CRMをはじめとするITを活用することで業績をアップさせながら残業時間の最長を約6割削減できたと説明している。
坂井建設の経営戦略は、顧客情報をベースにさまざまな事業を展開することを狙っている。この戦略から、個々のツールの部分最適ではなく、全体最適を狙って、CRMを含む45以上のアプリケーションを定額料金で利用できる「Zoho One」を導入した。
同社は現在、請求書を発行、管理できる「Zoho Books」、メールマガジンを配信して結果を分析できる「Zoho Campaigns」、プロジェクトの進捗や工数を管理するとともに分析できる「Zoho Projects」、ウェブサイト訪問者への営業を支援する「Zoho SalesIQ」を利用。Zoho CRMを中心にZoho CampaignsやZoho SalesIQを連携させてマーケティングオートメーションの構築を目指している。

坂井建設の残業時間の推移(2017年11月の減少は、5日間の社員旅行に伴う、出典:ゾーホージャパン)