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AWS re:Invent

内部ネットワークが6年で20倍--HPCに向けたAWSインフラの進化と期待

國谷武史 (編集部)

2019-12-04 00:13

 Amazon Web Services(AWS)の年次イベント「re:Invent 2019」が米国時間12月2日、ネバダ州ラスベガスで開幕した。ITインフラをテーマとする初日の基調講演では、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野に対する同社の広範な取り組みや顧客の事例が語られた。

AWS グローバルインフラストラクチャーおよびカスタマーサポート担当バイスプレジデントのPeter DeSantis氏
AWS グローバルインフラストラクチャーおよびカスタマーサポート担当バイスプレジデントのPeter DeSantis氏

 この講演の進行役を務めたのは、グローバルインフラストラクチャーおよびカスタマーサポート担当バイスプレジデントのPeter DeSantis氏。同氏は、前回2018年のre:Inventでも初日の講演に登壇し、ネットワークインフラ領域における施策やサービスなどを発表した。その流れから今回はHPCを取り上げた。

 現在のHPCは、先端科学やエンジニアリング、医療、気象予報など、さまざまな分野で利用されている。DeSantis氏は、HPCの巨大なワークロードを構成する多数の計算ノードを相互に接続するネットワークが肝であり、AWSは高性能、低遅延、高セキュリティ、低コストのネットワークインフラを構築し続けてきたと語る。例えば、複数のデータセンターを1つの単位にした「アベイラビリティーゾーン(AZ)」の内部では、「Placement Group Network」という構成を組む。2013年当時は460Tbpsだったが、2019年現在は10600Tbps(1.06Pbps)と6年で20倍に拡張された。

「Placement Group Network」の概念イメージ
「Placement Group Network」の概念イメージ

 DeSantis氏によれば、2018年に発表した100Gbpsのスループットを提供する「C5n」インスタンスのサービスは、Placement Group Networkの5%程度のキャパシティーを利用する。需要拡大に追従して能力を増強するのではなく、常に先読みした対応を図ることで、ユーザーにストレスを感じさせないサービスを提供し続けることが同氏の信条であるという。

 また、2017年から自社開発を進めるASICの「Nitro」を採用したネットワークコントローラーや、ネットワークインターフェースソフトウェア「Elastic Fabric Adapter」など、DeSantis氏はハードウェアとソフトウェアの両面からエコシステムを通じて取り組むことで、HPCに求められる超低遅延やリニアな拡張性、高セキュリティ実現していると強調した。

 AWSのインフラをHPCで使うユーザーとして自動車レースの「F1」、医療AI企業のInsitroが紹介された。

 F1では、2021年からレースカーの設計規則が大幅に改定される。その検討にAWSが利用された。F1のレースカーは、時速300km以上でも路面に接着して安定に走行できることが求められ、「ダウンフォース」と呼ぶ無駄のない理想的な空気抵抗で車体全体を接地させる。その設計のシミュレーションに長年HPCが使われてきた。

 近年はHPCの進化によって精度の高い車両設計が可能になり、F1開催地のサーキットで最速タイムの更新が相次ぐようになった。だがF1の運営団体は、現在の設計規則では、レースカーの後部や周囲に空気の乱流が発生しており、他のレースカーが接近すると乱流によってダウンフォースが低下し走行のバランスを失うことから、レースカー同士が接近した白熱の追い抜き合戦が行われにくいと指摘する。

 そこで新たな設計規則は、レースカーの後部や周囲に発生する空気の乱流を抑制しつつ、レースカー同士が接近してもダウンフォースが低下しない基本デザインが導入される。この基本デザインは、F1の運営団体がAWS上でコンピューターグラフィックによるシミュレーションや空気力学の計算などを行い、模型による風洞実験と組み合わせて作成された。F1運営団体のRob Smedley氏は、「失われるダウンフォースは従前の約30%から5%にまで低減される。車両同士が高速で近接しても安定し、白熱のバトルが増えることになるだろう」と試算している。

F1ではダウンフォースが高速安定走行を可能にする。前を行く車の後ろではダウンフォースが約3割減って不安定になり、前の車を追い抜きのが危険になる。新規則では減少量を約5%に抑えて、安全な追い抜きを可能にするという
F1ではダウンフォースが高速安定走行を可能にする。前を行く車の後ろではダウンフォースが約3割減って不安定になり、前の車を追い抜きのが危険になる。新規則では減少量を約5%に抑えて、安全な追い抜きを可能にするという

 Insitroは、新薬開発に巨額の資金を必要としたり、人による治験に長い時間を要したりする状況を解決すべく、機械学習と高度な推論の技術で遺伝子を解析し、疾病との因果関係を解き明かすことで、効率的な創薬の実現を目指している。

 Insitroの創業者で最高経営責任者を務めるDaphne Koller氏によれば、遺伝子の解析と疾病の関係性を解き明かすには、かつてはかなりの歳月を要すると見込まれたが、機械学習や画像認識などの技術の進化により、劇的に短縮されつつある。同社の場合、解析のための学習データは6カ月で95TBも増えるという。計算インフラの構築期間は、以前は3カ月を要したが、AWSを利用して2日に短縮した。Koller氏は、「2020年代にデジタル生物学という新たな世界を切り開きたい」と意気込む。

クラウドインフラのHPC環境を活用することで遺伝子解析のスピードも進化している
クラウドインフラのHPC環境を活用することで遺伝子解析のスピードも進化している

 講演の最後にDeSantis氏は、継続的なサービスインフラの拡充やグローバルネットワーク内での完全なデータ暗号化といった信頼の取り組みに加え、2040年に二酸化炭素排出量を限りなくゼロにする目標や再生可能エネルギーによるデータセンターへの電力供給を増やしていく計画なども説明した。

(取材協力:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)

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