ガートナー ジャパンは12月18日、「日本におけるポストモダンERPのハイプサイクル:2019年」を発表した。これは、人工知能(AI)をはじめとする新興テクノロジーに対応した「未来のERP」に備え、 ITリーダーが注目すべきERP(統合基幹業務システム)関連のテクノロジーやプラクティスを紹介するもの。日本のERP市場に大きな影響を及ぼすテクノロジーやプラクティスについて、それぞれの期待度と成熟度の関係を相対的に位置付けている。

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ERP市場が変革期を迎える中、旧来のオンプレミスのモノリシック(一枚岩)なERPスイートを分解した上で、複数のアプリケーションを疎結合で連携させる「ポストモダンERP」へと刷新する動きが活発化するとともに、その先にある「未来のERP」の姿を探るベンダーや企業も出始めている。
そうした状況において、ガートナーでは、ポストモダンERPの先にある未来のERP像として「エンタープライズビジネスケイパビリティー(EBC)」というコンセプトを打ち出している。同社の説明によると、これは「AI駆動、データ中心、コンシューマブル、人間の強化、イネーブリング、顧客指向という特徴を備えた新たな時代のERP像」であり、企業が必要とする機能や能力を担う複数のアプリケーションを組み合わせることで、変化に対して柔軟かつ俊敏に対応し、高いビジネス価値をもたらすことが期待されるという。
EBCの特徴は次の通りだ。
- AI駆動:人間の代わりにAIがプロセスを実行する
- データ中心:多くのアプリケーション、サービス、モノから取得されるデータを取り扱う
- コンシューマブル:コモディティー機能が安価なサービスとして提供される
- 人間の強化:AIと自動化によって、人間が優れた成果を出せるようにサポートする
- イネーブリング:あらゆるデバイスでシームレスなユーザーエクスペリエンスを提供する
- 顧客指向:顧客に対して差別化された製品/サービスを提供することに重点を置く
ポストモダンERPやEBCのような、ERPの新しいモデルが求められる背景には、ベンダーによるロックインや、重厚長大なERPにおける運用負担を回避する意図だけでなく、デジタルビジネスをはじめとした新たなトレンドや働き方改革に代表される就労環境の変化への対応がある。過度なカスタマイズを伴うオンプレミスのモノリシックなERPでは、コストがかさむことに加え、展開や機能変更に時間を要するため、もはやビジネスの求めるスピードに追随できなくなっている、とガートナーは分析する。
アナリストでバイスプレジデントの本好宏次氏は、「ERPの導入・刷新に責任を持つITリーダーは、AI、予測分析、会話型ユーザーエクスペリエンス、モノのインターネット(IoT)などのデジタルテクノロジーを取り込みつつ、複数のアプリケーションが緩やかに連携するERP環境をいかに構築できるかが、企業の競争力を左右し得ることを認識する必要がある。そのためには、ポストモダンERP、さらにはEBCへのロードマップも意識した、長期的なERP戦略を立案することが非常に重要になる」とコメントする。