ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」

第3回:「働き方改革」はERPにあり?--「ポストモダンERP」とは何か

取材・構成=翁長潤、國谷武史 2018年11月09日 07時00分

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 本連載は、元ソニーの最高情報責任者(CIO)で現在はガートナー ジャパンのエグゼクティブ プログラム グループ バイス プレジデント エグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏が、ガートナーに在籍するアナリストとの対談を通じて日本企業のITの現状と将来への展望を解き明かしていく。

 今回は、11月12日から開催される「Gartner Symposium/ITxpo 2018」のコンファレンス・チェアを務めるバイス プレジデント アナリストの本好宏次氏に、担当分野であるERP領域の話やGartner Symposium/ITxpoの見どころなどを聞いた。

アナリストはカウンセラー

長谷島:まず始めに、ガートナーのアナリストになろうとした動機をお話しいただけますか。

本好宏次氏。ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 エンタープライズアプリケーション担当バイス プレジデント, アナリスト。ERPを中心としたビジネス・アプリケーション分野における日本市場の動向調査/分析、ならびに製品の選定/導入に関するユーザー企業向けアドバイスを担当する。以前は米系コンサルティング会社で業務改革/システム導入に関わるコンサルティング業務に従事した。
本好宏次氏。ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 エンタープライズアプリケーション担当バイス プレジデント, アナリスト。ERPを中心としたビジネス・アプリケーション分野における日本市場の動向調査/分析、ならびに製品の選定/導入に関するユーザー企業向けアドバイスを担当する。以前は米系コンサルティング会社で業務改革/システム導入に関わるコンサルティング業務に従事した。

本好:大学時代に歴史社会学とジャーナリズムを専攻し、何かを調べ、分かったことを広く伝えるという仕事に興味がありました。当時からガートナーのことは知っていたのですが、新卒は採用しておらず、就職活動の結果、当時としては珍しかったウェブサイト制作のアルバイトをしていたことから、IT業界で働くことになりました。外資系のコンサルティングファームに7年間勤務しましたが、やはりリサーチの仕事をやりたいと考えていたところ、縁あってガートナーに入社しました。

長谷島:コンサルタントとアナリストの違いについてどのように考えているかお聞きしてもいいですか。

本好:「コンサルタントは外科医、アナリストは問診医やカウンセラー」というたとえ話を先輩から聞いたことがあり、同じITに関するアドバイスを提供する業種でも、何か種族が違うという感じがしますね。コンサルタントは、お客さまに一定期間張り付いて支援をしますが、アナリストは定期的に電話で問い合せに応じたり、たまに訪問したりして、お客さまの“健康状態”の相談を受けるという意味で、カウンセラーに近いイメージです。

 趣味でよく家族と国内旅行に行きますが、仕事と同様に、公になっている情報は事前に調べ、口コミや値段などから、独自の評価軸を考えてどこがいいかを順番付けしたり、比較したりしています。もちろん、調べるだけではなく、実際に現地で行って事実と異ならないか把握しないと気が済まないところもあります。

長谷島:プライベートでも徹底して調べることが好きだと、完全に職業病ですね(笑)。

日本企業が克服できないERPの問題とは?

長谷島:ERP(統合基幹業務システム)といえば本好さんというイメージですが、具体的にどんな分野のリサーチをされているのでしょうか?

本好:エンタープライズアプリケーションの動向について幅広くリサーチしていますが、ERPが中心ですね。

長谷島:ERPにはもう30年くらいの歴史がありますよね。グローバルを見ると、内製システムの仕組みを再構築する際にERPに置き換えていくという経緯をたどって、もうERP導入に関する難しさはずいぶん克服されてきたと思います。結果的に導入に失敗する事例は少なくなっているように思います。一方日本では、ERPプロジェクトの屍(しかばね)の山を築いてきたのではないかと感じますが。失敗の原因をどのように分析されていますか。

本好:実際にはグローバルでもERP導入の失敗プロジェクトはそれなりにあります。よく、日本企業はカスタマイズが多いと言われますが、これは日本固有の問題ではなく、世界的な状況です。最近は日本企業でもERPをカスタマイズしないで、なるべく標準機能を使おうという機運が出てきています。

長谷島:日本では、あまり必要がないと思われる領域でもアドオンが多いのですが、なぜですか。

本好:日本では終身雇用制の名残もあり、相対的に人材の流動性が少なく、業務の担当者と業務の内容が不可分な関係になっている傾向があります。今の仕事のやり方を変えるとか、標準化して他の人ができるようにするといった動機がわきにくいという背景があると思います。現在のやり方に慣れており、個別に見ればそれなりに効率的であるため、現状を維持したいという気持ちが現場で非常に強いという声が聞かれます。

 実は、1990年にガートナーのアナリストが「MRP(資材所要量計画)」から着想を得て、「ERP」という言葉を定義しました。その後、ERPのカバー範囲が広がっていったため、2000年ごろに「ERP II」という言葉を提唱したこともありますが、結果的には、まったく定着しませんでしたね。

 最近は従来の巨大なERPを、船のタンカーに例えています。堅牢で信頼性が高く、非常に安定しているが、身動きが取りづらいというイメージです。従来のERPは多くのコストがかかり、運用にも人手がかかるなど、非常に重いシステムになってしまったという背景があります。業界的には、何でもそろっているホテルのスイートルームに例えて、「ERPスイート」という言い方をすることもあります。

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